大臣が「顔認証の精度を上げろ」と号令すると、逆に精度が下がる⁉

顔認証について取材する中で、びっくりするような事実に出会いました。

ある病院に勤める女性が、勤務先にマイナンバーカードのカードリーダーがあったので、本当に顔認証がされるかテストをしたというのです。

同じ病院の同僚男性の「マイナンバーカード」をカードリーダーにのせ、女性が自分の顔をカメラにかざしたところ、なんと本人認証されてしまいました。

それが顔のよく似た家族の写真ならまだ分かりますが(それでも本人証明という点では大問題ですが)、赤の他人の男性のカードでも、本人認証されてしまうというのですから、顔認証そのものが機能していないとしか思えません。

実は、この病院では、以前、マイナ保険証で顔認証ができないというトラブルがあり、業者が改善したという経緯がありました。そこで、再びトラブルが起きないように、誰の顔でも認証するように基準を最低ラインまで下げたのではないかと考えられます。

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別人の顔で認証された、という例は、全国保険医団体連合会にも続々と報告されています。こうした事例があったクリニックのなかには「顔認証はできません」と張り紙をしているところもあります。

誰の顔でも認証できるようにしてしまえば、顔認証ができないというトラブルはたしかに減るでしょう。業者としては失点を減らすことができます。けれど、他人のカードで診察を受け、誤った治療をされた場合は命に関わります。誰の顔であろうが認証してしまうということは、絶対にあってはならないことです。

河野大臣は、2023年6月30日のフジテレビ系の朝の情報番組「めざまし8」に出演し、「顔認証がなかなかできないということが起きたときは、おそらく後ろから日が差していたり、顔が暗くなっていると、顔認証がしづらいということがありますので、そこは機械の方の精度を上げていくということも大事です」と言いました。

皮肉なことに、河野大臣が「トラブルを防ぐために顔認証の精度を上げろ」と業者に強く号令すればするほど、業者は、ペナルティーが怖いのでトラブルを起こさないように顔認証の精度を下げ、基準を緩くするようになってしまうということが、現実に起きているのではないでしょうか。