未婚率が改善されない理由
では、こうした新たな出会いの機会創出は、未婚率の改善に繋がっているのでしょうか。残念ながら、必ずしもそうとは言えないようです。
国勢調査による年代別(5歳単位)の未婚率をみると、’20年、20〜30代の男女で5年前より未婚率が顕著に下がったのは、30代後半(35〜39歳)の男性のみで、それ以外の年代では男女共にほぼ横ばいか、むしろ未婚率が増加傾向でした(総務省「国勢調査」)。
また、婚姻件数や婚姻率(人口千対)全体を見ても、マッチングサービスがその数や割合の増加にさほど貢献していない様子が見えてきます。共に新型コロナの感染拡大後(’20年2月以降)である’20年と’21年の比較でも、婚姻件数は年間およそ2.5万組減(約52.6万組→約50.1万組)、婚姻率も0.2%減(4.3%→4.1%)と、増えるどころかむしろ減ってしまっています(’21年厚生労働省「人口動態統計」)。
つまり、アプリで出会って結婚する人たちは、婚姻件数全体に占める割合は増えている半面、カップル(既婚者)の〝数〞の増加には、さほど貢献していない可能性が高いのです。
一体なぜなのか、私は大きく3つ理由があるのではないか、と考えます。まず1つ目が、こうしたネット系マッチングサービスの利用者が、一部の層に偏っているのではないかと見られることです。
’21年、内閣府主催の研究会で「マッチングアプリは、自力救済色の強い手段」だと発言したのは、ニッセイ基礎研究所生活研究部の天野馨南子(かなこ)氏です。『未婚化する日本』(白秋社)などの著書もある彼女は、マッチングアプリで結婚に至った男女について、元来それまでの活動量が非常に多く、かつコミュニケーションを面倒がらない傾向にあるのではないか、と指摘しました(’21年同「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会(第3回)」)。
つまり、マッチングアプリで結婚まで至れるような男女は、もともと恋愛や結婚の「積極層」に多く、たとえアプリがなくても、いつかは誰かと出会えていたのではないか、と想像できます。そうだとすれば、アプリによって出会えるまでの〝時間〞は多少短縮されるかもしれませんが、出会える人の〝数〞の増加には、さほど寄与しないのかもしれません。
また、「いつかは結婚したい」とする未婚男女(18〜34歳)は、いまも「適当な相手にまだ巡り会わないから(結婚していない)」を、未婚理由のトップにあげています(男性36.6%/女性45.7%)が、実はこの割合や傾向は、ネット系マッチングサービスが普及するより、はるか以前、30年以上も前(’92年)から、ほとんど変わっていません(男性42%/女性46%)(「第10回、第16回出生動向基本調査」)。
ここから考えると、婚活アプリなど現在普及するサービスの多くは、よほど性能が悪いのかもしれない、とさえ思えますよね。