強まる男性への要求

さらに、これも後述しますが、男性の雇用や年収は「恋愛経験」や「恋愛(結婚)意欲」とも深く結びついており、取材しても、非正規や年収200〜300万円台の男性(おもに20〜30代)は、「僕は恋愛できる身分じゃない」や「『そっち(恋愛できる)側』の人間じゃないんで」など、みずからを卑下する傾向が見られます。

ある民間の調査でも、結婚願望が「ない」と回答した未婚男性(20〜40代前半)は、やはり年収が下がるほど多く、年収500〜699万円でおよそ7人に1人(14.3%)、年収100〜299万円では3人に1人以上(36.6%)と、一定の開きがみてとれるのです(’21年ネクストレベル調べ/年収700万円未満の場合)。

そんな様子を見て、「なんだか弱々しい」「頼りない」などと受け取ってしまう女性たちを、端から全否定することはできません。

ただ一方で、別の民間の調査において、女性(18歳以上)が男性に望む「最低年収」をみると、いまだに8割近くが「400万円以上」と答えています(図表8)(’21年リンクバル「未婚男女の婚活・結婚意識調査」)。

おそらく彼女たちは、それを高望みとは考えていないのですが、たとえば35〜39歳男性で「年収400万円」は、正規男性に限っても「最低」どころか平均より約50万円も多く、しかも同水準の未婚男性は3割程度です。多くは、30代前半までに結婚してしまっているのです(’19年「賃金構造基本統計調査」)。

国が貧乏になっても変わらない日本女性の「上昇婚志向」…結婚相手に求める最低年収「400万」は平均年収を上回る_4
図表8 未婚男女(18歳以上)が結婚相手に求める最低年収。『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)

本節の前半でお伝えした通り、そもそも近年、結婚しない男女が増えた一因は、先の(2)女性の社会進出にもあります。

正社員の20〜29歳で、男女の年収における「中央値」を比べても、男性では「250〜400万円」、女性で「240〜350万円」と、20代では劇的な差はありません(’22年パーソルキャリア「正社員の年収中央値」)。20代は年収だけを見れば、着実に〝男女平等〞の時代に近づいてはいるのです。

近年は、女性における「正規」割合自体も増えています。適齢期(25〜34歳)女性の非正規割合は、ピーク時(’07年)には4割強にのぼりましたが、近年は3割強と減少傾向で、正規比率の増加が顕著です。(総務省「労働力調査(詳細統計)」ほか)。

それなのに、いまも女性の8割近くは「年収400万円以上」を結婚相手の最低条件だとするなど、91.6%が男性に「経済力」を求めます。そのうえ同じ調査では、96.5%が「家事・育児の能力や姿勢(家事・育児協力)」を男性に望み、さらに(恋愛時ほどではないにせよ)81.3%の女性が、「容姿(見た目力)」まで求めるようになりました。

まるで、結婚相手に「3高(高学歴、高収入、高身長)」を求めていた、能天気な私たちバブル女性の青春時代(’80年代後半〜’90年代前半)に逆戻りしたかのようです。いえそれどころか、新たに家事・育児力を求める分、男性への要求をさらに強めたとも言えるでしょう。