評論家が語る月見の今と未来
今年の月見商品は、ふたを開けてみれば、バラエティ豊かな商品が揃っていたことに気づく。最後にハンバーガー評論家として活動している松原好秀氏に近年の月見商品のトレンドについて聞いてみた。
「やはり半熟たまご、ないしは卵黄ソースをサンドする企業が増えてきましたね。1991年にマクドナルドが『月見バーガー』を発売して以降、この10数年は月見のハンバーガーと言えばしっかり火が入った固焼きのフライドエッグが定番でした。半熟たまごがハンバーガーチェーン業界で注目されたのは、2005年にロッテリアが発売した『半熟たまごのてりやきバーガー』が最初で、以来『半熟』といえばロッテリアだったのです。
しかし近年は食品加工技術の向上も目覚ましく、店舗でも半熟たまごを提供しやすくなっています。また、ここ数年は、『月見』の商業化が急速に進み、ハンバーガーチェーンのみならず、牛丼チェーンや宅配ピザチェーンなど他業界でも月見商品が展開されるなど、月見が消費者にとっておなじみの存在となったことも大きい。
月見はお題が『たまご』と決まっていて、創意工夫しやすいバーガーなので、自社のオリジナリティを活かすアイデアを打ち出しやすい。各社、大元のオリジナルであるマクドナルドの月見バーガーを超えようと、何とか差別化しようとした結果、半熟たまごを導入する勢力が優勢になったのだと考えられます。そもそも皆さん、『半熟』には基本的に弱いですからね。一方でフレッシュネスバーガーのような素材重視のチェーンや、ドムドムハンバーガーといった独創性を重視するチェーンでは、月見と逆張りをするような商品を開発する形で、メインストリームとはまた違ったブランディングをする傾向にあり、面白いですね」
こうした月見の盛り上がりをよい流れと評価する一方で、ハンバーガー評論家としては月見の原点に立ち返った発想も忘れないでほしいようだ。
「このブームをさらに繫栄・発展させる上では、たまごそのもののおいしさやビジュアルの向上も求められます。個人的には月見バーガーが『すごくおいしい!』と思ったことは実はあまりなくて(笑)、たまごの部分だけ味が抜けたようになってしまうのを兼ねて問題に思ってました。
ビジュアルも本来であれば、たまごの黄身を月に見立てて『月見』と称しているワケですから、包み紙を開けた時に『月(黄身)が見えない』というのは正直淋しいですよね。月見と謳うからには月はきれいに出てほしいですし、できることなら黄身が見えるようにしてほしい。その辺り、企業も入念なマーケットリサーチをもとに商品開発を行っているはずなので、来年以降にアッと驚く月見商品が登場する可能性はありますよ!」
来年はよりパワーアップした月見商品に飛び“つき”たい!
取材・文/文月/A4studio