尿毒素がAIMによって掃除された

末期の腎不全の状態では、腎臓はほぼ完全に死んでいる状態である。死んだ細胞が生き返ることはない。

たしかに、AIMが、腎臓の中にある死細胞のデブリや炎症性の物質をきれいに掃除すれば、もしかしたらそのうちに、ある程度腎臓の細胞が再生する、という可能性もゼロではないかもしれない。

しかし、キジちゃんの場合、AIMを打ってすぐに元気になったのだ。

余命2週間、腎不全末期だった猫が1年以上も延命。驚きの効果を発揮したタンパク質「AIM」が猫に初めて投与された日_2
5回目の投薬後すぐに元気になったキジちゃん

だから、死んだ腎臓が復活したとも考えにくい。実際に、腎機能を表す血液のマーカーであるクレアチニン(Cre)は、AIM投与の前後でそれほど変化はなかった。

では何が起こったのだろうか? 可能性としては一つしかない。

腎臓が死んでしまって血液にたくさん溜まった老廃物、すなわち尿毒素がAIMによって掃除されたとしか考えられなかった。

ちょうど、透析をしたのと同じような効果を、AIMの注射で得たのではないか。尿毒素は、まさに血液中のゴミなので、AIMで掃除できてもおかしくない。

ただ、尿毒素には非常にたくさんの種類があり、しかもそれら一つひとつの血液中での増減を網羅的に解析する手段は、残念ながら存在しない。これはヒトでも状況は同じである。

だから、キジちゃんにAIMを投与した後、どのような尿毒素が掃除されたかを調べることはできなかった。

一方、血液中の尿毒素は全身に炎症を起こすため、末期腎不全になると血中の炎症マーカーの値が上昇してくる。キジちゃんもAIMを投与する前は、「SAA(血清アミロイドA)」という全身の炎症を示すマーカー値が著しく上昇していた。

それがAIMを注射したのち、SAAの値は急激に低下した。これは、間接的にではあるが、「全身の尿毒素が減少したことを示している」と言ってよい。

キジちゃんのような末期の腎不全の患者ネコにAIMを投与すると、尿毒素が減少し、全身状態が顕著に改善する効果があるらしいのだ。

とはいっても、腎臓自体はすでに、ほぼ機能していないのだから、尿毒素はいったんAIMで取り除いても、また徐々に溜まってくるはずだ。これも透析の場合と同じ原理である。