なんとかしてAIMを
ネコの腎臓薬として開発したい
しかしキジちゃんの場合は、AIMを投与した後、しばらくの間元気であった。そして、再び元気がなくなり、次にAIMを投与したのは1カ月後だった。
ヒトの透析の場合は1週間に数回行わねばならない。それからすると、1カ月というのは驚異的な長さだ。
なぜ、キジちゃんの場合、AIMの効果がこんなに長続きしたのかは、まだよくわからない。しかし、事実として、その後月単位の間隔(ときには3カ月空いた)でAIMを注射することによって、余命1〜2週間と宣告され、目も開けられないほど弱っていたキジちゃんが、それから1年以上も生きていた。
ただ、研究室で培養できるAIMの分量には限りがある。
そのため、しばらくAIMを投与することができないでいたら、残念ながらキジちゃんは、あるとき急激に状態が悪くなって亡くなってしまった。「ずっと定期的にAIMを注射することができていたら…」と、いまでも悔やまれる。
キジちゃんの治療にはAIMを1回当たり2㎎、5回の投与で計10㎎を必要としていたが、大学の研究室で10㎎のAIMを作るのは大変な労力と研究費がかかっていた。さらに、キジちゃん以外のネコにも投与をしていたし、ほかの実験にもたくさんAIMを使うようになっていた。キジちゃんのように状態が急変したネコのために、10㎎のAIMをストックしておくことはできなかったのだ。
キジちゃんのオーナーさんは事情を理解してくださったが、私も小林先生も「なんとかしてAIMをネコの腎臓薬として開発したい」という思いになった。
#2に続く
ネコの寿命はいまの倍の30歳くらいになる
さまざまな病気とAIMのかかわり
AIMのネコ薬の開発作業
文/宮崎徹
キジちゃん写真/『猫が30歳まで生きる日』(時事通信社)提供
最終ページイメージ写真/shutterstock













