約6割の子どもが勉強を中断して即レスしてしまうスマホのメッセージの罠。通知音だけでも集中力が低下する驚くべき実験の事実
スマホを使用する時間の長い子どもの学力が低くなる可能性の高さは、昨今の常識となりつつある。スマホによって勉強の時間が少なくなったり、睡眠の質が悪くなったりすることが原因だと思われているが、実態はもっと深刻だった。『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『スマホはどこまで脳を壊すか』 #1
対人関係に抱く不安の傾向が高い人ほど、通知音によって集中力が下げられる
音が鳴って集中力が下がるのは当たり前のことなので、LINEの通知音と同じ頻度でアラームの音を鳴らす条件下でも検査を行ない、集中力の指標を比べました。
解析の結果、アラームの音を鳴らしたときと比べて、LINEの通知が鳴ったときの方がボタンを押すまでの平均時間が長くなりました。さらに、素早く押せたり、気を取られて遅れてしまったりするような、ボタンを押すまでの時間のばらつきが大きくなっていました。これらの結果から、LINEの通知音は集中力を下げていることがわかりました。
さらに、「早く返信しないと嫌われちゃう……!」といった、対人関係に抱く不安の傾向が高い人ほど、通知音によって集中力が下げられる程度が大きいことも明らかになりました。
この実験のポイントは、実際にスマホを操作しているわけではないというところです。
「ながら勉強」をしていなかったとしても、勉強中にスマホが机の上にあって、通知が届くだけでも、集中力が下がってしまうということを意味しています。
この実験の結果からも、やはり「勉強中はスマホの電源を切ってリビングなどに置き、目に入らないようにする」ということを徹底するべきだといえます。
文/榊 浩平
#2『ネットを毎日使い続けた子どもの3年後の脳画像が衝撃…認知機能、記憶や学習に関わる海馬のほか、言葉や感情を処理する領域の発達が止まっていた』はこちら
#3『1980年以降に生まれた世代は認知症リスクが6倍に? スマホが加速させる認知症のリスク要因、オンライン習慣がもたらす怖すぎる未来』はこちら
『スマホはどこまで脳を壊すか』 (朝日新書)
榊 浩平 (著)、川島 隆太 (監修)
2023/2/13
¥935
256ページ
ISBN:978-4022952035
【「脳トレ」の川島研究室が緊急提言】
スマホに依存しすぎると
思考の中枢「前頭前野」がやられる!
「ものを考えられない」
「何かに集中することができない」
スマホ依存を放置した先に待つのは、
認知症予備軍の人たちであふれる社会か!?
スマホを常用し、脳に“ラク”をさせていると、
成長期の子どもなら脳発達が大きく損なわれ、
成人なら不安・抑うつ傾向が高くなることが明らかに。
最新研究で見えてきた衝撃の未来。
■目次
はじめに スマホは人を幸せにするのか?
第1章 思考の中枢を担う前頭前野を守れ
脳は領域によって機能を分担している/大脳には四つの部屋がある/前頭前野の大切な役割①認知機能/前頭前野の大切な役割②コミュニケーション/脳の活動を観察する方法―脳機能イメージング/10代の過ごし方がその後の脳を左右する/加齢によって萎縮が早く進んでしまう前頭前野/前頭前野はどうしたら鍛えられるのか?
第2章 スマホはここまで学力を破壊する
私たちの生活の一部となった「オンライン習慣」/「インターネット依存」とアルコール依存の類似性/スマホの使いすぎが子どもたちの学力を「破壊」/勉強してもよく寝ても「3時間以上のスマホ」で台なしに!/スマホの使用時間を減らせば成績アップ/スマホ横目に3時間勉強しても成果は30分/「ながら」という悪癖/「会話のラリー」というインスタントメッセージの罠/通知音が鳴るだけで低下する集中力/スマホやタブレットでの学習は脳がはたらかない?/インターネットを使い続けた、衝撃の3年後
第3章 オンライン・コミュニケーションの落とし穴
コロナ禍におけるコミュニケーションの変化―対面からオンラインへ/コミュニケーションとは?/ヒトにとってコミュニケーションは必要不可欠/親子での会話が子どもの健やかな脳を支える/人間の脳には負荷が必要/オンラインと対面ではコミュニケーションの質が違う/「つながっている」と感じるとき、脳と脳も同期する/なぜ人混みの中でも足並みを揃えて歩けるのか?/授業形式によって子どもの脳活動は変わる
第4章 オンラインでは脳は「つながらない」
「ひとりでボーッとしている状態と変わらない」/「誰と」で変わるコミュニケーションの質/老若男女を問わず盛り上がる話題とは?/2019年に始まった実験が予期せぬ方向へ/「オンラインでは何かが足りない」から浮かんだ仮説/なぜオンライン会話では脳が同期しないのか?/画面越しの映像はパラパラ漫画と同じ/オンラインは「きっかけ」で「つなぎ」
第5章 スマホ漬けの脳はどうなるか
オンライン習慣の先に見える未来/将来の認知症リスクを高める可能性/リスク要因① 学習の質が低下/リスク要因②うつ病とSNS/リスク要因③「つながる」はずが孤独に/リスク要因④ごろごろして運動不足に/「リスク」をどのように受け止めますか?
第6章 すぐ始められる脱オンライン習慣のススメ
私たちの生活はオンラインなしには成り立たないのか?/脱オンライン習慣の効果―国内外の実例/言うは易く行なうは難し?/最大の拷問はプロ野球の速報/紙の地図頼りのドライブに初挑戦/今日からできる脱オンライン習慣のススメ/オンライン習慣との上手な付き合い方
おわりに 前頭前野の「自己管理能力」でスマホから身を守れ!