本当に描きたい漫画

――成田さんは漫画の投稿時間をデータにまとめていたり、ネーム会議に毎回2本出したりと、意外と戦略的な一面がありますよね。

当時の自分は、漫画を人生賭けたゲームだと思ってたんですよ。攻略サイトを見てどっちの武器がダメージ出るかなみたいな感覚でした。どの時間帯に投稿したら数字がいいかデータを取って、また投げてと繰り返してランキングを荒らしまくっていたので、そりゃ電話も来るわなと思います。自分より面白い漫画もあったと思いますけど、自分のほうがちょっと狡猾だったというか。

【漫画あり】「全然おもしろくないね。週刊連載の漫画家が1年に何ページ描いてるか知ってる?」漫画家・成田成哲のデビューへの道筋となった担当編集の忘れられない一言_5
『筋肉島』より ©成田成哲/集英社

――それは連載を取ってからもやっているんですか?

『アビスレイジ』(2018〜2021)の時はやってました。一時期、『地獄楽』がライバルみたいな数字だったので、『地獄楽』の「いいジャン!(読者による評価)」が伸びている回の引き方などを分析して、それを自分なりに展開に取り入れるみたいなことをずっとやっていて。『アビスレイジ』は1話目の閲覧が50万くらいだったんですが、連載終了時は68万ぐらいまで伸びたので、まあまあの効果はあったかもしれないですね。

【漫画あり】「全然おもしろくないね。週刊連載の漫画家が1年に何ページ描いてるか知ってる?」漫画家・成田成哲のデビューへの道筋となった担当編集の忘れられない一言_6
『アビスレイジ』より ©成田成哲/集英社

――もともと描きたかった格闘漫画から筋肉漫画に寄っていったのも、ある種の戦略だったのでしょうか?

そうですね(笑)。ただ、いまだに本当に描きたいのは格闘漫画なんです。ネームを2本出していたのも、1本は自分が本当に書きたい純な格闘漫画で、もう1本は筋肉に何か別の要素を足したような企画もので分けていました。1回目以降はすべてその横にそれたものが掲載になっていたので、「こっちかぁ」って思いながらやってましたね。

――そこは我を通すのではなく、やっぱり売れてナンボという考えですか?

新人で金に余裕があるわけでもなかったので、早く連載を通さなきゃなと思ってた部分もありました。でも次は我を通したいですね。純に描きたいものを、質を高めてやってみたいです。