専用グラウンドや合宿所は必要か?

続いて「モノ」にまつわるデータです。

▼専用グラウンドの有無
あり 67.4%
なし 32.6%

専用グラウンドを有するチームが7割近くを占めています。それでも30%超のチームに専用グラウンドがなく、他部と共同利用するなど限定された練習環境で高い競技成績を収めている点にも注目したいところです。今夏の甲子園に初出場した共栄学園は、専用グラウンドを持たずして激戦の東東京大会を制しました。

甲子園強豪校に共通するヒト・モノ・カネとは…「監督は現任校で指導歴11年以上」「部員数は61~100人」「専用グラウンド、留学生あり」_4

専用グラウンドがないチームには、遠征費や球場使用料が費用としてかかると考えられますが、専用グラウンドを持っている野球部でも、絶えず維持費がかかります。雨でぬかるみ、水たまりができると黒土や砂を入れて整備しますが、その購入費用がかかります。

予算に余裕のあるチームでは、プロの業者に依頼して定期的にグラウンドのメンテナンスをしています。グラウンド整備用のトラクターを所有している野球部もあります。グラウンド整備に必要なトンボ・レーキ・コートブラシなどの道具も修理しながら使用しますが、消耗品ですので定期的に購入が必要になってきます。

周囲に住宅の多い土地では、グラウンドから舞う土ぼこりがトラブルの原因になりかねません。定期的にスプリンクラーなどで水をまいたり、防砂ネットを施工したりする必要が出てきます。

一方、人工芝のグラウンドは土ぼこりが立たず、雨でグラウンドが激しく傷むこともありませんが、施工するには高額な費用がかかります。

「グラウンド整備は野球部員がやるものだから、金はかからない」と思われがちですが、グラウンドのための経費も意外と無視できないのです。

近年、高校球児の体がたくましくなっている背景

近年、高校球児の体がたくましくなっていると感じないでしょうか。トレーニングだけでなく、食事や休養の大切さが現場で周知され、進化した結果だと感じますが、背景には寮や合宿所の整備もあげられます。

▼寮・合宿所の有無
あり 69.6%
なし 30.4%


寮で食事を出す高校の場合、入寮前に部員に食物アレルギーの有無を確認し、部員に応じて適切なメニューを組む必要が出てきます。

また、部員に栄養価の高い食事をとらせるために、クオリティーの高い食材を使い、食べ盛りの球児を満足させるだけの量をつくりたいところ。でも、それを実現するには当然ながらコストがかかります。

一番簡単なのは寮費を高くすることですが、家計が圧迫されるため、敬遠されるリスクがあります。一般的な寮費の金額に設定し、不足分を学校が補う、もしくは後援会やOB会にバックアップしてもらうケースもあるようです。

取材・構成/大西基也 百武憲一 菊地高弘
写真/shutterstock

引用・参考文献
大西基也,百武憲一,岩井美樹(2018)高等学校硬式野球部の経営に関する研究-甲子園ベスト16経験のある硬式野球部を対象として-.国際武道大学研究紀要,34:21-27.

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