問題は適性のない学生を学校が退校させないこと

「等松先生が告発するずっと前から、学生舎の暮らしがどんなものかは散々ネット上で書かれています。それなのに、どうして(新入生たちは)わからないのか。私には、むしろそれがわかりません。『戦場の理不尽さに耐えるための、日常の理不尽だ』なんて言い方は非常識だし、おかしいと思いますが、それでも、私たちはただの学生じゃないんです。
特別職の公務員として学費を免除していただき、手当ももらい、実質的には軍人を目指している。学園ドラマの遊びじゃないってことぐらいは覚悟して入ってきてほしい」

防衛大学校の入学式 写真:Stanislav Kogiku/アフロ
防衛大学校の入学式 写真:Stanislav Kogiku/アフロ

「信じられないかもしれませんが……」と前置きし、本田さんは言う。

「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか」

その上で、「本館」(防大執行部を意味する隠語)や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘した。

「私が勝手に決めつけているのではありません。実際、医官が適応障害の診断を下した学生だったり、手首を切ったり、痙攣を起こしたりする学生たちは一定数います。
もちろん、本館や指導官が問題を抱えた学生のケアをして、立ち直るための手助けをするのであれば、ぜひそうしていただきたいですが、現実は違います。学校は手をこまねいたまま上級生に丸投げし、すべての問題を学生間指導で解決するよう強いてくるのです」