解説: 高圧型とは?

高圧型の親は子どもに対して支配的で、親の言う通りにさせようとします。何かと束縛し、些細なことにも干渉します。従わない場合には罰を与えることが多く、「〇〇しなければ、こんなに大変なことになる」といった恐怖心をあおるのもその一例です。

学歴や就職先など、社会的評価につながる部分に関してはとくに干渉が強くなることが多いです。世間体を気にするのです。また、親自身が引け目に思っていることを子どもに投影し、補償しようとします。

子どもは親の顔色をうかがうことが常となり、自主的・積極的に物事に取り組もうとする意欲が育ちません。失敗したときは、「そもそも自分の判断ではない」と考えるので、他罰的になります。自分の存在を認められていないという思いが強く、自己肯定感が低いのも特徴です。

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一方的に命令して、子どもの気持ちを無視

トモヤの父親は高圧型の典型でした。「~しなさい」と命令し、「~してはいけない」と禁止する言い方が高圧型を象徴しています。しかも、非常に一方的であることが問題です。トモヤの希望とは関係なく、父親の価値観にもとづいて物事が選択されていました。

「健康のために野菜を食べなさい」くらいのことは、ほとんどの人が言っていると思いますが、「運動はサッカーをやりなさい」「洋服はこれを着なさい」と指定するのは違和感がありますね。親の好みを押し付けており、子どもの気持ちを無視しています。
 
トモヤは当然、不満を抱いていました。しかし、「お前のためを思っているんだ」と言われると、反抗もできません。長男の自分に、いい大学に行っていい会社に入ってほしいと期待しているのだということはわかっていました。

期待されること自体は、嬉しいものです。不満を持ちながらも、親の言うことを聞く「いい子」として育ってきました。

聞く耳を持たない親に失望したトモヤ

中学2年生のときに、初めて両親にキレて不満をぶつけましたが、両親はこのときに気づくべきでした。

トモヤからのわかりやすいSOSです。よく話を聞いて、子育ての方針を修正することができれば、その後に大きな問題が起こる危険性は減ったに違いありません。多少の問題があっても、うまく対処して乗り越えていくことができたのではないでしょうか。

ところが両親は聞く耳を持たなかったので、トモヤは失望し、完全に親を信頼できなくなりました。表面上は言うことを聞いておき、家を出て自由になることだけが目的になったのです。

少年鑑別所での面接の際、トモヤは「マナとの交際を卑劣な方法で否定された。あいつらは最低だ」と両親への怒りを激しい言葉で語りました。彼にとっては相当ショックな事件だったことがうかがえます。両親に敵意に近い感情を抱いており、親子関係の調整が難しいケースであると感じました。