リーマンショック後の日本

この世界的金融危機の余波が、2009年のギリシャ危機や2012年のスペイン危機にも影響した。リーマンショック直後は多くの専門家の間で「ドル凋落」予想が流れたが、実際に危機に陥ったのはドルに挑戦するはずのユーロだった。また、円は超円高に振れたため輸出は不振で、デフレ圧力に晒された日本の国内経済の落ち込みは米欧よりもひどかった。

そんな欧州や日本の困惑を尻目に、リーマンショック後の米国は、それまでの通貨・金融政策の定石を破って、1990年代のバブル崩壊不況の日本の二の舞になるのを避けるための方策を講じた。

米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board)は、まず第1段階として、大々的にドル資金を発行する量的金融緩和政策(QE)をとって、紙クズ同然になりかけた住宅ローン抵当証券を買い上げた。そうして住宅バブルの崩壊によって値下がりした住宅市場を下支えしたのだ。 

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米国ワシントンDCの連邦準備理事会

第2段階のQE2以降からは国債購入に重点を移して、金利を低めに維持し、QEで流された巨額のドル資金を株式市場に誘導して株価を引き上げてきた。

そればかりではない。ドルはウォール街の手で新興国株式を中心に世界中に配分され、ドルによる世界の金融市場支配は強化された。家計が金融資産の大半を株式で運用し、かつ、企業は株式市場からの資金調達によって設備投資する米国の実体経済は、株高への反応度が日本よりも数倍も高い。米国経済はQEとともにじわじわと回復し、FRBは2014年10月にQEを打ち切った。