出演者のディスタンスが気にならない画面分割へシフト

出演者が減ったのと同時に、その距離も遠くなったため、カメラの画角に全体が収まらないという事態が発生。そこで生まれたのが、画面分割の手法である。

『ポツンと一軒家』(ABCテレビ・テレビ朝日系)あたりがわかりやすい例だが、所さんはじめ(本当は微妙に離れた場所にいる)スタジオコメンテーターが縦4分割された画面に1人ずつ表示されたりするようになった。

距離のある出演者たちがあたかも近くで話しているかのように見せるこの手法は、当初は苦肉の策だったが、今では見る側もすっかり慣れ、別にディスタンスをそんなにとっていない番組でも使われている(尚、この手法は不祥事を理由に一部の出演者登場場面をカットする手法としても近年使用されている)。

考えてみれば、漫画では、コマ割りで同時に何かをやっている複数人の姿を描くことはよくある。やむを得ずやったことが、意外と効果的な手法ということで定着した一例といってもいいだろう。

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千鳥の強さが際立つVTR+スタジオコメントの新構成

また、スタジオに限られた人数しかいられないとなった結果、雛壇に芸能人たくさん系の番組は苦戦を強いられ、代わりにVTRを見る系の番組が増えた。

世界の衝撃映像的な安易なものももちろん増えたのだが、コロナ禍前から大ブームを巻き起こしていた千鳥の『相席食堂』(ABCテレビ)的なスタジオのツッコミとVTRをセットで楽しむスタイルの番組も増加した。

VTRを見る系の番組というのは、VTRパートとスタジオパートが明確に分かれているものが多かったし、今も主流ではある。その場合、VTR中もスタジオは映るがそれはワイプの中で表情が映るのみだ。しかし『相席食堂』の場合はスタジオのツッコミありきの作りで、VTR中に千鳥のコメントがバンバン入るし、VTRを中断してスタジオに引き戻す。

『あらびき団』(TBS系)の流れもくむ『千鳥のクセスゴ!』(フジテレビ系)も事前収録されたネタに千鳥がバンバンコメントしていくスタイルである。

VTRの面白さ、スタジオの面白さを分けて考えるのではなく、VTR+スタジオで相乗効果を出す。そういう番組が増えてきていて、千鳥の凄さが際立ってきた感がある。

コロナ禍のバラエティの苦労・変遷を経て復活した今回の『FNS27時間テレビ』。

生放送ではあったが、主軸が事前収録VTRに千鳥・かまいたちが突っ込むスタイルの『千鳥の鬼レンチャン』となったのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

何はともあれ、テレビバラエティの世界にも祭りが戻ってきた。
久々に大勢と共に笑いあえる夏を楽しみ尽くしたいと思う。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太