CMで描かれる令和の理想の義母=夏木マリ
某社のCM。同居することになった義母。不安を覚える妻。しかしやってきた姑はサイドを刈り上げ、オレンジ色の髪をなびかせ、進歩的で合理的。そして一言「Uber Eatsでいいんじゃない?」
別な某社のCM。丸山礼扮する妊娠中の嫁と仲よく犬連れで散歩する義母。「もうすぐね」と孫を楽しみにしながら「あ、そうだ、その子のためにも学資保険入ったほうがいいわね」とかんぽ生命の人を紹介してあげる姑。
タイプは違うものの共通するのは「話しやすくかっこいい義母」役。両CMでこれを演じているのは夏木マリである。
義母と妻といえば、かつての長寿CM、ハラダ製茶のやぶ北ブレンドなどでおなじみの「緊張感ある関係」が定番のステレオタイプであった。このような寛容でかっこいい義母パターンが増えてきたのは、令和になって以降のアップデートの一つなのかもしれない。
夏木マリの対抗馬となりそうな女優はいない?
さて、そこで、この役を演じられる人は他にいるだろうかと考えた時、確かに夏木マリ以上にしっくりくる俳優はいない。
吉永小百合ではない。67歳の時の映画のキスシーンについて頬を赤らめて記者会見で語るくらいの永遠の清純派からは「Uber Eatsでいいんじゃない?」という言葉が出るなんて想像がつかない。
岩下志麻でもない。和服の志麻姐さんから「学資保険入ったらええんちゃうか」と言われても、嫁は震え上がってしまうだろう。
草笛光子はかっこいいが流石に年齢を重ね過ぎていて「かくしゃくとしていらっしゃいますね」という感じになってしまうし、義母というよりはもう一世代上である。
髪型だけなら瀬川瑛子も全盛期のデヴィット・ボウイを思わせるカッコよさだが、どうしても深夜の通販番組を連想させてしまう。
やはり考えれば考えるほど夏木マリしかいない気がする。
このまま、現代の「義母と妻」あるいは「義母と婿」像が変わっていくのであれば、これからもこの役は夏木マリが独占してしまいそうな勢いである。