豆腐を食べる層も食べ方も“エイジング”している
老舗豆腐メーカー・アサヒコから2020年に発売された「豆腐バー」は1年間で約1000万本を販売し、大ヒット商品となった。
その生みの親は、同社のマーケティング本部長で今年5月に代表取締役に就任した池田未央氏だ。
池田氏の経歴がまず興味深い。国内外の食品メーカーにて商品開発とマーケティングに20年以上従事。これまで「袋入りキャンディーの売上10年連続1位」「東京駅No.1手土産」、など数々のヒット商品を手掛けてきた。
そんな中、なぜ老舗の豆腐メーカーに転職したのだろうか。
「アサヒコに入るまでは、お菓子業界で20年間、コンビニ、スーパー、百貨店、駅ナカ店舗などあらゆるチャンネルにおいて商品開発とマーケティングを担当してきました。お菓子は消費者を笑顔にする、心の栄養になる商品で意義のある仕事でしたが、今度は体の栄養になる商品に携わりたくて、アサヒコから人を探しているという話があり、2018年に思い切って飛び込みました」(池田さん)
パッケージも華やかで次々と新商品が発売されるお菓子業界に比べ、豆腐はシンプルなパッケージで昔ながらの商品がずっと並んでいるため、池田さんにとっては地味で業界全体の時間が止まっているように見えたそうだ。
「購入するお客さまにとっても豆腐は原料が国産大豆かどうかくらいで、80円で買うのか、60円で買うのかという価格コンシャスな商品です。メーカーのカラーや商品特性をあまり打ち出すことなく、昔のまま売り続けている……。市場はどんどん縮小している業界だと入ってみてわかりました。
また、これはデータを見てわかったのですが、豆腐の需要を支えているのが60代~80代の高齢者層がメインということです。そうなると食べ方も味噌汁、冷奴、鍋など昔からあまり変わらないですよね。
食べ方もお客さま層もどんどんエイジングしているマーケットだということがわかりました。
豆腐は体にいい食品なので、もっと幅広い世代の方に食べてもらうことが大きな課題だとこの業界に入ってすぐに感じました」(池田さん)