近い将来、日本は80歳になってもがむしゃらに働く国に? “痛い目”に遭う前から始めたい資産防衛術
「私は現在55歳ですが、おそらく75歳、80歳まで働くのではないかと懸念しています」そう語るのは『インフレ課税と闘う!』の著者で、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。もはや経済成長に期待できなくなった日本で生き残るために、今、最も必要なこととは?
インフレ課税と闘う!#11
老人もがむしゃらに働く時代
――なぜ、日本の労働市場では、人材の流動化が進まないのでしょう。
日本企業に変わらないことが大好きな人たちがいて、賃金も生産性も低い人たちが会社に巣食っているからでしょう。日本企業の経営権を握っている人たちが「変わりたくない」と言っているかぎりは難しいですね。でも、今までそうだったとしても、会社が反省をして、失敗を教訓にして、変わればいいのです。
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――日本の人たちはこれまで、厳しい現実をあまり突きつけてこられなかった。あるいは現実を見ないフリをしているうちに、ここまで来てしまった。でも、これからは問題の先送りができない時代に突入したように思います。
少子化同様、ラストチャンスの時期に来ていると思います。会社に勤めていて、老後は安泰だと思っていると、遅かれ早かれ自分が持っている資産は枯渇します。枯渇したらどうするのか? 働くしかないんです。現役のときにどういう身分だったとかは関係なく、郵便局でデリバリのバイトをするとか、がむしゃらに働かねばならなくなる。
それはそれでいいと思いますが、人生後半に追い込まれるというのを予定していなかった人にとっては、あまり好ましい話ではありません。
拙著のなかでもっとも読者に読んでいただきたいのは資産運用のところです。副業はちょっとスキルが高いのですが、資産運用をしないと社会保障だけでは食っていけないのがこれからの日本の実状なのです。
現在のインフレ傾向はまだまだ継続する可能性があります。過去の歴史を振り返っても、変化が起こり始めた当初は「これは一時的な現象だ」と過小評価され、しばらくしてから継続的なものだとわかってくる。“痛い目”にあう前から、少し早いかなと思うぐらいのタイミングで準備しておくことが賢明です。拙著が皆さんの将来計画や資産防衛のために、少しでも役立てばいいなと思っています。
文/熊野英生 写真/shutterstock
#9 日本人の実質賃金はこの1年間でひとり当たり約8万円も減少していた! インフレ下、国民の8万円はどこに消えたのか?
#10 コロナ禍前、一泊3万円のホテルに泊まっていた外国人が、今は5万円のホテルに泊まれるカラクリ
2023年5月26日発売
1,980円(税込)
四六判/344ページ
ISBN:978-4-08-786138-9
もはやインフレは止まらない!
これからの日本経済、私たちの生活はどうなる?
コロナ禍やウクライナ戦争を経て、世界経済の循環は滞り、エネルギー価格などが高騰した結果、世界中でインフレが日常化している。2022年からアメリカでは、8%を超えるインフレが続き、米国の0%だった金利は5%を超えるまでになろうとしている。世界経済のフェーズが完全に変わった!
30年以上、ずっとデフレが続いた日本も例外ではなく、ここ数年来、上昇してきた土地やマンションなどの不動産ばかりでなく、石油や天然ガスなどのエネルギー価格が高騰したため、まずは電気料金が上がった。さらに円安でも打撃を受け、輸入食品ばかりではく、今や日常の生鮮食品などの物価がぐんぐん上がりだした。2021年までのデフレモードはすっかり変わり、あらゆるものが値上げされ、家計にダメージが直撃した。
これからは、「物価は上昇するもの」というインフレ前提で、家計をやりくりし、財産も守っていかなければならない。一方、物価の上昇ほどには、給与所得は上がらず、しかもインフレからは逃れられないことから、これはまさに「インフレ課税」とも言えるだろう。
昨今の円安は、海外シフトを進めてきた日本の企業にとってもはや有利とは言えず、エネルギーや食料品の輸入が多い日本にとっては、ダメージの方が大きい。日本の経済力も、かつてGDPが世界2位であったことが夢のようで、衰退の方向に向かっている。日銀の総裁も植田総裁に変わったが、この金融緩和状況はしばらく続きそうだと言われている。
しかし日本経済が、大きな転換点に直面していることは疑いもない。国家破綻などありえないと言われてきたが、果たして本当にそうなのか?
これから日本経済はどう変わっていくのか? そんななかで、私たちはどのように働き、財産を築いていくべきなのか?
個人の防衛手段として外貨投資や、副業のすすめなど、具体的な対処法や、価値観の切り替えなども指南する、著者渾身の一冊!