「もうこんなに食べたんですか…」菜々子はチョコレートをパクパク食べ続けた
薫とそんな話をしながら、菜々子はチョコレートをパクパク食べ続けた。
「あっ、もうこんなに食べたんですか?結構甘いから私はこれ以上無理です」
チョコレートの入っていた金色の包み紙が、いつの間にか机の上で山になっていた。
「この時間にそんな甘いものを食べてたら絶対太るぞ」
向かいのデスクから声が聞こえた。7つ年上の先輩だ。
「私は貧血だから疲れやすいんです。だから、仕方なくチョコレートを食べてるんですよ」
「仕方なくね」
菜々子はチョコレートが大好きだ。いつもデスクの引き出しにはチョコレートが入っている。最近、嬉しいことに休憩スペースに福利厚生のおやつボックスが設置された。いくらでも食べることができるので、残業のときは自然とそこに足が向いてしまう。これから夕食も取らずにひと仕事するのだから、これがないとやっていられない。おやつを設置してくれるなんて、私たち社員を大切にしてくれるいい会社だと思う。
「今日はチョコレートが夕食ってことにすれば大丈夫」
「今日はチョコレートが夕食ってことにすれば、カロリーオーバーにもならないから大丈夫」
こんなふうに、夕食を作る時間も気力もないときは、おやつが夕食になるのが日常茶飯事だった。
菜々子は、夕方6時を過ぎるころにはいつも強い疲労を感じていた。フラフラして、集中力も切れてくる。毎年健康診断では貧血を指摘されていたので、フラフラしたり疲れやすいのは、生まれつき貧血があるせいだと思っていた。
実は、この疲れやすさは、過労や貧血だけが原因ではない。チョコレートの食べすぎこそが大きな原因である可能性がある。近ごろ、このような疲れやすい女性が増え続けている。