どれくらいの規模の防衛力が必要か?
その前提の上で、いま日本人が考えておかなければならない論点を3つ挙げておきたい。
第1の論点は、どれくらいの規模の防衛力が必要か、という点である。これは、「ハウ・マッチ・イズ・イナフ」として、米国の軍事戦略を巡る議論でも頻繁に論点になるものである。安全保障環境の悪化に対応して、日本は防衛費を大幅に増額する決定をした。この増額された防衛費が、適切かつ的確に使われるのか、そしてどの程度の防衛費の規模が、今後の安全保障環境において必要になるのか、こうした点についての議論を深めていかなければならない。
まさにこの点において必要になるのが、軍事問題に関する知識である。
日本周辺で有事が発生した場合、主要な戦いは航空戦と海上戦となるだろう。その中で、どのように航空優勢と制海権を確保するのか、そのためにはどのような形で探知―攻撃サイクルを構築する必要があるのか、3自衛隊および米軍との間の指揮統制はどうあるべきなのか、そういった論点を考慮しながら、どれくらいの規模の自衛隊を構築していくことが必要なのか、といった議論が必要になる。
そして、国家予算の中でどの程度の防衛費を投入するのが適正なのかも考えていかなければならない。例えば、2022年12月の戦略3文書で防衛費を増額すると決める前は、防衛費は社会保障費の約6分の1から約8分の1、公共事業費の約半分といった割合で支出されていた。防衛費が今後、ほぼ倍増していくということは、公共事業費とおおむね同じくらいの水準になるということでもある。
こういった、他の支出項目との比較も考えた上で、日本としてどの程度を防衛費に支出するべきなのか、これは納税者としての国民の1人ひとりが、主体的に考えていかなければならないことである。
#2へつづく