「職員室で『自分はエホバの証人です』と言わされた」
家庭にテレビはあったが、ほとんど見せてもらうことはなかった。
「『テレビは有益な時間を奪う』と言われていました。特にアニメはダメでした。ただ、祖父が野球と相撲を見ていたのを覚えています。何を見ていいのか家族内でも意見が分かれてましたが、『アンパンマン』はNGでしたね。『サザエさん』も夕方の伝導時間とかぶるのでダメでした」
信者の家族として過ごす中で、幼いころから希死念慮(自ら死のうと思うこと)を抱いていたという。
「何か気持ち悪さがあったんです。聖書に書いてある通りに行動しているのですが、自分で思考していないような感覚で。父はムチを打つときに興奮して、訳のわからない言葉を発していました。私も、(エホバを)信じていたほうが気持ちの面では楽だったかもしれないです。
エホバでは『信者は死なない』と言われていますが、そんなことはありえない。私は3歳くらいから『死にたい』と思っていたので、『永遠の命』には興味がありませんでした。家族は『この世に、死にたいと思う人がいる』ということは理解ができないようでした」
小学校に入学すると、自然と聖書以外の勉強に接するようになり、エホバの“世界”から離れることを楽しむようになった。
「学校ではいじめに遭いかけたりもしましたが、私は語彙力があったので、逆に相手を言い負かして、泣かせたりもしていました。ただ、先生は私の親が信者だったことを知っていたので、私には腫れ物に触る感じだったと思います」
学校では担任が変わるたびに、信者であることを証言させられたという。
「一人で職員室へ行き、『自分はエホバの証人です』と言わされました。というのも、小学校には信者が参加NGの行事があったからです。例えば、国歌斉唱、国旗掲揚、校歌斉唱、運動会の騎馬戦、年中行事の七夕やクリスマス、正月。年賀状もだめです。新年を祝うこと自体がダメなんです。
国家や校歌の斉唱については、親がいるときには起立もせず、歌わないのですが、親がいないときは起立して、歌ったりすることもありました。だから友達には、エホバの証人の信者とバレました。友達の誕生会にはひっそりと参加することはありましたが、親には言えませんでした。でも、あるとき、友達の親が自宅に連絡をしたために参加がバレて、ムチ打ちされました」