「お金目的でも性的目的でもなく援助交際を…」父はDV、母は宗教、元彼は依存体質…苦悩する宗教2世がそれでも父親の暴力を今も「虐待」と呼ばない理由 はこちら
「死者は復活する」という教義
「子どもの頃から、どうやってエホバの証人から抜けるのか考えていました」
そう話すのは奥田咲里栄さん(30代)。九州で育った「エホバの証人」2世だ。地域の信者で組織される「会衆」には40〜50人が集まり、学校の同じ学年には信者の子どもたちが3人いた。咲里栄さんは中学2年生のときにバプテスマ(洗礼)を受けたが、18歳の頃に脱会した。
現在は、「JW児童虐待被害アーカイブ」という団体で広報を担当(「JW」は、エホバの証人の略称)。団体の代表の綿和孝さんは、こう話す。
「昨年、宗教2世が注目されるきっかけになった事件の前から、エホバの証人の信者2世らにアンケートを取っていました。集団的に行われてきた児童虐待の体験について沢山の声が集まりました。でも、教団はその事実を認めません。虐待の被害者は心を壊している人も多く、このことをちゃんと記録として残さなければと思い、調査を始めました」
咲里栄さんは、母親が入信した経緯や自身がバプテスマを受けた事実についてこう語る。
「母親は子育ての悩みがあったようで、私が2歳のときに信者になりました。『信者になり、本当のことがわかった』と言っていました。母の父をがんで亡くしましたが、『死者は復活する』という教義は魅力的だったようで、死の恐怖がなくなったそうです。母親は私に、『エホバの教えのもとで育たないとうちの子ではない』と言っていました。エホバの証人では、早い子は小学生でバプテスマを受けます。私は中2でした」
母親は宗教活動にのめり込んでいき、咲里栄さんを連れて多くの時間を費やした。父親はどうしていたのか。
「エホバの証人としての活動に反対だったようです。そのことだけが原因か分かりませんが、私が2歳のとき、父は家を出て行ったと聞いています」