「エンディング」がゲームに「物語」をもたらす

「誰でもエンディングを見ることができる」ことが、なぜ革命的だったのでしょうか?

それは、物語には必ず「はじまり」と「終わり」が必要だからです。ここでいう「終わり=エンディング」はいわゆる「ゲームオーバー」とは異なり、「ゲームの全課程を完了した」という達成感を伴うものを指します。ゲームオーバーは「完了」というより「中断」ですね。RPGの普及によってゲームに「はじまり」と「終わり」があることが自明のこととなったとき、ゲームは「物語メディア」としての性質を一気に強めていきました。

実際、RPG普及以前に主流だったアクション/シューティングゲームにおけるエンディングは、「プレイヤーの1%も見ないだろう」という前提で開発されていたため、ほとんどは「クリアおめでとう」という言葉が英語で書かれた1枚の画面が用意されている程度の簡素なものか、あるいはそもそもエンディングシーンが存在しないゲームも多かったのです。特にアーケードゲームでは「上手なプレイヤーにはそのぶん長時間遊ばせてあげることがサービス」という考え方から、簡素なエンディング画面の後、スタート地点に戻ってさらに高難度な2周目がスタートするループ構造のゲームも多くありました。

ところが、ドラクエによるRPGの普及以降、制作者はゲームのエンディングで物語の決着をつけることを意図し、プレイヤーもそれを意識するようになりました。任天堂のRPG『MOTHER』で使われたキャッチコピー「エンディングまで、泣くんじゃない。」にも象徴されるように「ゲームのエンディングで感動して泣いてしまった」という体験が強烈なインパクトを持つようになり、ゲームは小説、映画、マンガのようにシナリオをもつ「物語の器」となっていったのです。

国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?
渡辺範明
震災の教訓はどこへ……ずさんな避難計画で原発再稼働が推進されている実態_2
2023年6月21日
1,990円(税込)
四六判/336ページ
ISBN:978-4-7816-2214-9

日本でRPGはなぜ人気をえたか。物語はゲームでどう表現されるようになったのか。
国民的RPG、ドラクエとFFの功績をあらためて徹底検証!
「国民的ゲーム」として、日本のカルチャーに大きな影響を与えているドラゴンクエストとファイナルファンタジー。日本ではRPGがなぜこれほど人気なのか。ゲームで物語はどう表現されるようになったのか。TBSラジオ『アフター6ジャンクション』でもおなじみ、元スクウェア・エニックスのプロデューサーで、気鋭のゲームデザイナーである著者が、ゲームシステム・世界観・制作体制に注目し、ドラクエとFFの功績をあらためて検証する。

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ライムスター宇多丸さん(ラッパー/ラジオパーソナリティ)
「ドラクエ・FF弱者の私でも(笑)しっかり超絶、面白いッ!」
佐久間宣行さん(テレビプロデューサー)
「夢中になったゲームの歴史は僕らの人生の歴史でもある。ずっと読み続けたい本だ!」
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