スキーができないのにニセコを訪れる人々
中国資本に買収された宿泊施設の数に関する統計はないが、経営者が高齢で引退したタイミングで売りに出され、それが在日中国人の不動産業者などを介して、中国人富裕層の手に渡っている。
同様の動きは他の都市でも加速している。とくに中国資本が大量に入っているといわれるのが京都の町家や北海道のリゾート地だ。
北海道といえば欧米人、とくにオーストラリア人が多く集うニセコが有名だが、昨今、ニセコにも急増しているのが中国人だ。
中国で最初に北海道が注目されたのは08年。中国で大ヒットした映画『非誠勿擾』(フェイチェンウーラオ 邦題:狙った恋の落とし方。)の舞台が道東だったことから、最初の北海道ブームが起きた。
以降、雪がほとんど降らない上海以南などに住む富裕層の間でも注目され、とくにニセコのパウダースノーは中国人の憧れの存在になった。
北海道経済部観光局のデータによると、コロナ前の19年、北海道を訪れた中国人観光客は約59万4000人と、全外国人観光客の4分の1を占めた。
雪が降らない中国南部、広東省広州市に住む40代の知り合いは、以前日本に住んでいたときにスキーを覚え、コロナ禍前までは、毎年、春節前の比較的航空券が安い時期に北海道までスキー旅行に出かけていた。
その人は「16~17年頃だったか、ニセコに急激に中国人が増え始めたな、と感じました。スキーはできなくても、投資目的で、高級コンドミニアムなどを見学したり、投資の相談にきたりした人もいたようです。香港やシンガポールの人も多かった」と話す。
その人が現地のコンドミニアムの人と話したところ、「外国人の投資のおかげでニセコの地価がどんどん上がっている。おかげでニセコが潤っている」といい「自分は喜ばれているように感じた」という。