ヨーロッパを魅了した美貌の皇妃の愛と苦しみを追いかけて

“ヨーロッパ宮廷随一の美貌”と謳われ、没後100年以上が経過した今でもアイコニックな存在として世界中で愛され続けているのが、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(1830〜1916年)の妻、皇后エリザベート(1837〜1898年)です。

今なお「シシィ」の愛称で親しまれる彼女は、日本でも高い人気を誇り、演劇作品や小説の題材としても広く取り扱われています。

エリザベートをテーマにした伝記漫画はいくつか存在しますが、なかでも『マンガ 皇妃エリザベート』(著:名香智子)は、彼女の波瀾万丈な生涯をつぶさに描写した名作。自由を求め悲劇へと向かっていくエリザベートと、彼女を愛した皇帝、とりまく人々とのドラマが美しいタッチで綴られています。

「オルフェウスの窓」「皇妃エリザベート」…名作漫画でたどるオーストリア“聖地巡礼”。華麗なる歴史と悲恋とロマンに浸る旅を_15
エリザベートの生涯を描いた『マンガ 皇妃エリザベート』(著:名香智子、原作:デ・カール・ジャン、発行:講談社+α文庫/絶版)
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その美貌と波乱の人生で、世界中で人気がある皇妃エリザベート(©︎ Bundesmobilienverwaltung/Gerald Schedy)

オーストリアでエリザベートの聖地を巡りたいなら、まず訪れたいのがウィーン中央にある世界最大級の王宮「ホーフブルク王宮」でしょう。

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ウィーンの中心に位置する「ホーフブルク王宮」(©︎ Österreich Werbung, Photographer: Julius Silver)

1918年までハプスブルク家の王宮として使われていたこの宮殿は、今でも連邦大統領の公邸や欧州安全保障協力機構の常設会議場などが置かれており、オーストリアの政治の中心として機能しています。また、宮殿内にはハプスブルク家が統治していた時代の貴重な財宝が多く保管されており、皇帝が暮らした部屋や宝物館を見学できます。

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「ホーフブルク王宮」の内部にあるフランツ・ヨーゼフ1世の居間(©︎ SKB/Alexander Eugen Koller)
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「王宮宝物館」にある王冠(©︎ KHM-Museumsverband)

広い敷地内には、世界でもっとも美しい図書館のひとつ「オーストリア国立図書館」や、ウィーン少年合唱団が毎週の日曜礼拝で聖歌を歌う「王宮礼拝堂」といった文化的な施設も置かれています。エリザベートが過ごした宮殿を巡りつつ、さらに知的好奇心を刺激するのにはぴったりのスポットです。

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世界でもっとも美しい図書館のひとつ「オーストリア国立図書館」(©︎ Österreich Werbung, Photographer: Volker Preusser)

そしてエリザベートファンならマストで訪れたいのが、ホーフブルク王宮内にある「シシィ博物館」(シシィ=エリザベートの愛称)です。その名からもわかるとおり、こちらはエリザベートの貴重な私物や資料を展示したファン必見の施設。エリザベートが実際に着用していた衣服やアクセサリー、直筆の手紙が入ったキャビネット、幼少期に奏でていたハープ、デスマスクなど、総数300点以上の貴重な展示品を見ることができます。

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「シシィ博物館」のエントランス(©︎ SKB, Photographer: Alexander Eugen Koller)
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館内にはエリザベートの貴重な私物や資料が展示されている(©︎ Österreich Werbung, Photographer: Cross Media Redaktion)

ホーフブルク王宮はエリザベートが皇帝と暮らした王宮として有名ですが、実は、新婚生活を過ごしたのはウィーンの南にある「ラクセンブルク宮殿」でした。皇太子ルドルフ(1858〜1889年)が生まれたのも、この「ラクセンブルク宮殿」です。

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ウィーン南方に位置する「ラクセンブルク宮殿」(©︎ Österreich Werbung, Photographer: Cross Media Redaktion)

緑豊かで広大な「ラクセンブルク宮殿」には、古典ロマン派の代表的な建築物である「フランツェンスブルク城」をはじめ、数々の離宮や庭園が建設されています。特にドイツの造園家ペーター・ヨーゼフ・レンネが設計した庭園の美しさは、息を呑むほど。ヨーロッパ随一の庭園として、芸術作品としても高く評価されています。

エリザベートはバイエルンで自然に囲まれてのびのび育ったため、息苦しい「ホーフブルク王宮」から離れた「ラクセンブルク宮殿」の広い庭を散歩するのが大好きだったとか。
この庭園は市民の憩いの場として一般開放されているので、エリザベートの史跡を辿りながら、ぜひ訪れてみてください。公共交通機関を使えば、ウィーン中央駅から30分程度で行くことができます。

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緑豊かなラクセンブルク宮殿内の庭園(©︎ Ulli Cecerle-Uitz)