70歳からはたばこをやめる必要はない

やめたい人が一定数いるのに、なかなかやめられない二大嗜好品といえば、たばことアルコールです。年を重ねると、健康のために嗜好品をあきらめる道を選ぶという話を聞きます。たばこやアルコールはその最たるものですが、私は基本的に「70代以降の人はたばこをやめる必要はない」と考えています。

たばこには、がん以外に二つの大きなリスクがあります。

一つは動脈硬化です。喫煙者は非喫煙者に比べると、明らかに心筋梗塞や脳梗塞になりやすい傾向があります。

もう一つのリスクは、肺気腫です。これは、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という機能が破壊される病気です。肺気腫になると呼吸が非常に苦しくなるので、重度のたばこ好きの人でも禁煙するようになるケースが多々あります。

70代未満の人であれば、たばこをやめたほうが人生におけるその後のQOLが上がるので、「本当はやめたほうがいいのです」とアドバイスしたいと思います。ただし、相手が70代以上であれば、話は別です。

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65歳を越えると生存率はほぼ変わらない

前述のとおり、過去に浴風会の老人ホームで、喫煙者と非喫煙者の生存曲線を調べたところ、65歳を越えると生存率はほぼ変わらないことが明らかになりました。

なぜこんな現象が起こるのかというと、喫煙によってがんや心筋梗塞になる人は、老人ホームに入る前にすでに亡くなっている可能性が高いからです。ホームに入る時点で何十年もたばこを吸ってきているのに肺がんにも心筋梗塞にもなっていない人は、たばこに強い何らかの因子を持っている可能性が高いのです。

ならば、いまさら節制するより、自身の体の強さを信じ、他人に迷惑をかけない程度に喫煙したほうが、その人自身の人生を楽しく全うできるのではないかと思います。

そのほかにも、たばこを吸うメリットはあります。喫煙者にとっては精神安定効果も高いし、喫煙者同士で強い連帯感が生まれているという側面もあります。