②休憩時間中に働いた時間…「休憩できない」以上に、それが「見えていない」

実質的な休憩時間の平均値は、小学校が9.4分、中学校が14.6分であった。休憩時間の内訳は、小学校と中学校のいずれも「0分」が約半数を占めている。所定の「45分」以上の休憩を取っているのは、小学校で5.6%、中学校で11.8%にとどまっている(図2-6)。

それ以上に深刻なのは、職場の正式な休憩時間帯を「知らない」が小学校で29.2%、中学校で26.6%にのぼった。そもそも休憩を取るべき時間帯さえ把握していない。これでは、休憩を取ろうにも、取ることはできない。

北海道教職員組合が発表した2021年の「9月勤務実態記録」(組合のウェブサイトに調査結果の詳細が掲載されている)によると、道内のアンケート調査の結果、学校単位で見ると、休憩時間中の業務を実際に把握しているのは、全体の36.3%にすぎず、残りの63.7%は把握していないという。

先の休憩時間の平均値(小学校が9.4分、中学校が14.6分)を、所定の「45分」から差し引いた値、すなわち小学校で35.6分、中学校で30.4分の労働が、在校等時間に反映されていない可能性がある。「休憩できない」以上に、それが「見えていない」ところに、問題の核心がある。

図2-6 平日の休憩時間。『先生がいなくなる』より
図2-6 平日の休憩時間。『先生がいなくなる』より

③過少申告により削られた時間…管理職への忖度

勤務時間の過少申告のプロセスには、大きく分けて二つの可能性がある。一つが、管理職から要請されるパターンである。もう一つが、みずから過少申告するパターンである。

管理職から要請されるパターンについては、「この2年ほどの間に、書類上の勤務時間数を少なく書き換えるように、求められたことがあるか」という質問を出した。その結果は、小学校教員の15.9%、中学校教員の17.2%が、そのように求められたことがあると回答している(図2-7)。

図2-7 過小申告を求められたことがあるか。『先生がいなくなる』より
図2-7 過小申告を求められたことがあるか。『先生がいなくなる』より

また、みずから勤務時間を少なく報告するケースもある。管理職に忖度して過少申告することもあれば、長時間労働の者に要請される産業医との面談を回避するために過少申告することもある。

「勤務時間数を、正確に申告する予定か」との質問に対して、小学校の場合、平日の勤務時間については教員の12.2%が、土日の勤務時間については勤務した教員のうち43.0%が、中学校の場合、平日の勤務時間については教員の14.0%が、土日の勤務時間については勤務した教員のうち27.6%が、「いいえ」と回答している。小学校と中学校いずれにおいても、土日は正確に申告しない状況がしばしば起きている。以上が、「見えない残業時間」の実態である。