金本位制への復帰議論のスタート

しかし米国議会にもまっとうな論客が存在しており動きがでた。
米連邦議会下院のアレックス・ムーニー議員が「金本位制再現法案」を提出した。

ムーニーはウェスト・ヴァージニア州選出の共和党議員。彼の法案は「財務省とFRB(連邦準備制度理事会)は全ての金保有と金取引を30ヶ月以内に公開」を求め、「その後、連邦準備制度理事会のドル紙幣は金との固定相場に移行し、FRBは新しい固定価格で金と交換が可能になる」とするもの。

ムーニー議員は「金本位制の復活がワシントンの無責任な支出、無からのお金の創造という無秩序から米国経済を守る」とし、「貨幣の価値を決めるのは官僚でなく、経済学によって形成される。米国経済は連邦準備制度理事会や無謀なワシントンの消費者に翻弄されることはなくなる」と主張した。

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金本位制への復帰議論は1981年にレーガン政権が誕生した直後、「金問題委員会」が設置され、当時のジュード・ワニンスキらの論客を呼んで、突っ込んだ討議がなされた。しかし新資本主義とかグローバリズムの担い手のウォール街が、金本位制復帰を「古くさい」と強く反駁し立ち消えになった。

ムーニー議員の指摘は「ニクソン大統領の金本位離脱は『暫定措置』であり、従前の法律は有効だ」とする。ガソリン高騰などの物価高、インフレ、失業をもたらしたのも、金本位制度から離脱したのが遠因とする考え方である。
23 年3月時点で、自動車ローンの金利は9.1%に跳ね上がっている(22年10月は5.8%だった)。

理論的に言えば通貨は固定制が望ましく為替差損は政府が負うのが経済学の基本ではなかったのか。ところが実体貿易の数十倍もの投機資金が為替相場に投入されており、理論ではなく現実をみると、もし為替相場が固定制に戻ると仮定したら、猛烈な投機がおこるだろう。伝家の宝刀が抜けなくなったのが現状である。