毎週のようにクレームを入れてくる地域住民

22年12月に公表された生徒指導提要の改訂版では、校則については「守らせることばかりにこだわらず、教職員もその背景や理由を理解し、児童生徒が自主的に守ることが重要だ」と指摘し、学校のホームページに公開することなどを推奨した。

それでも厳しい校則を残すことにこだわる学校は少なくない。多くの学校が理由として挙げるのが「生徒や校風を守るため」だ。

都内のある私立高の男性教員は「学校のイメージがあるので一定の規則は必要」と言い切る。勤務先では「女子はスカート丈を厳守」「化粧禁止」「男子は耳が髪の毛で隠れてはだめ」などの校則があり、一部の生徒からは「厳しい」と不満が出る。しかし毎週のようにクレームを入れてくる地域住民らの日が厳しいこともあり、緩めることはできないという。

同志社大の太田肇教授(組織論)はこうした現状について「日本の学校は行動も服装も何でも同じにさせたがる。集団のルールに合わせるよう求める同調圧力の強さが影響している」と話す。

下着は白かベージュ…外国出身児童が不登校になるほど強要した「ブラック校則」の実態と教員の言い分「地域からクレームが毎週くる」_2

「4x5」が正解で「5x4」が減点

子どもをルールで縛る風潮は授業にもはびこる。

「リンゴを4個持った子が5人。リンゴは全部でいくつ」という問題の答え(20個)を出す式が4x5は正解、5x4は減点……。小学校ではこんな指導がまかり通る。学習指導要領の解説書でも重視される、かける数とかけられる数の関係性を理解させることが狙いとみられる。

数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した京都大の森重文特別教授は減点について「とんでもないこと」と言い切る。「自由な発想を妨げ、科学の進歩を阻害する。順番を変えてやってみないと発見は生まれない」

東京都内の公立小に通う娘を持つ父親は「担任の漢字指導が厳しく、学校に行きたがらなくなった」と話す。「とめ・はね・はらいが手本通りでない」と何度もやり直しを命じられたという。文科省は漢字の書き方を柔軟に評価する方針も示しているが、現場では硬直的な指導が残る。