何より大切なのは「スマホのパスワード」

——伊勢田さんが代表理事を務める「日本デジタル終活協会」では、普段どのような活動をされているのでしょうか。

日本デジタル終活協会は、その名のとおり「デジタル終活の普及」を目的に2016年に設立した団体です。設立当初はデジタル終活に特化した「エンディングノート」(自分の死後に備え、遺族に伝えたいことを書き留めておくノート)を作ることからスタートしました。

現在は、セミナーやメディアを通じてデジタル終活をわかりやすく伝える活動を中心に行っています。

——「デジタル終活」の分野において、遺族の方は、実際にどんな点で困ることが多いのでしょうか?

やはり「スマホやPCのパスワードがわからない」というケースが圧倒的に多いですね。PCなら何とかなることもありますが、特にスマホはパスワードロックを解除するのがかなり大変です。

一般的に、自分自身のスマホのパスワードを家族やパートナーと共有しているケースは少ないように思われますが、万が一の際、スマホのログインパスワード(パスコード)がわからず、そもそもスマホ内にアクセスすることができないというケースは今後増えていくものと思われます。

故人のスマホのログインパスワード(パスコード)がわからない場合には、データ復旧の専門家にご相談されるとよいでしょう。

——故人のスマホのロックを解除してくれる業者がいるんですね。

はい。ただ、専門家にスマホのパスワードロックを解除してもらう場合、ケースバイケースですが、半年から1年以上かかることもあり、また解除費用も非常に高額(20~30万円程度)となってしまうこともあります。

特に、最新のOSや端末については、特に時間がかかるようです。

スマホやPCが開けないと、遺族としてはかなり困ることになります。たとえば、故人の友人を葬儀に呼びたいけれど、連絡先がわからない、遺影となるいい写真が見つからない等のトラブルはよく耳にします。また、相続関連では「サブスクリプションで毎月何に課金していたかがわからない」「ネット証券会社がどこかわからない」といったケースがよくあります。

そういう事態を防ぐために、私はとにかく「スマホのパスワードを残しましょう」というメッセージを発信しています。もちろん、PCのパスワードも残しておいてほしいところですが、まずはとにかくスマホです。スマホのパスワードさえわかれば、あとはどうにかなるケースが多いので。

【死んだ後にスマホの中身は見られたくない…】プライバシーは守れて、遺族に迷惑はかけない、“1分で終わる”賢いデジタル終活術_2