対価がもらえないのになぜ日々ヤフコメに投稿するのか

「世論の『共感』には、バッシングされている芸能人に批判的なことを書く。逆に、持ち上げられている人は持ち上げる。自分の本当の思いとは関係ない。また、逆張りもあまり『そう思う』ボタンは押してもらえません。あくまでも、世論に逆らわずにコメントを残しています」

対価がもらえないのに、日々「ヤフコメ」に投稿するのは、「人をバッシングするというスリル」「自分の意見が認めてもらえる(という承認欲求)」がモチベーションになっているというのである。

ヤフー側は、コメント欄の自動非表示機能について「当社による恣意性を極力排除するために、人による判断ではなく、各コメントの削除判断を行うAIを活用し、そのAIが判定した点数の集計結果に基づいて、条件や閾値を設定しています」「媒体や記事の内容などは影響していません」(『ZAITEN』2022年5月号)と説明している。

1日あたりの削除コメントの件数は2万件(2021年6月時点)、1日あたり3・5本の記事のヤフコメ欄を閉鎖している(2021年10~12月)という。

ヤフコメの質向上に向けては、匿名のコメントだけではなく、2020年には「公式コメンテーター制度」をスタートさせている。

ヤフコメで「いいね!」を集める40代劇団員の手法とやりがいとは。1日平均32万件の投稿を集めるニュースインフラの実態_2

「ヤフコメ」を見る目を私たちは養った方がいい

「1本400字以内で報酬は2000円。『参考になった』ボタンが押されるごとに0・2円が加算される仕組み」(公式コメンテーター)だとされる。「ギャラ」としては少ないかもしれないが、個人の「名」を売るチャンスであると捉えられている。「自己宣伝をして、テレビ出演につなげたい」という書き手の溜まり場になっているとの声も漏れる。

識者の力で「ヤフコメ」の底上げを図りたいのが、現在の「ヤフーニュース」の戦略ともいえるが、自らの書いた「ヤフコメ」がバズる条件は「素早くコメントを出し、世論に追随すること」(先述の劇団員)である。自分の名を売りたい識者もそのことに気づいていないわけがない。「ヤフコメ」を見る目を私たちは養った方がいい、ということだろう。