オドレイは一つ星のレストランで半年にわたって多くのことを学んできた
──オドレイさんは料理をする場面が多く、包丁さばきなど素晴らしかったのですが、星付きのレストランにまで行って、学んでほしかったこと、習得したことを教えてください。
「彼女には6カ月間の研修を、マチュー・パコーが料理人を務めるパリ8区に実在する一つ星レストラン『アピシウス』で研修をしてもらいました。シェフとしての所作や立ち居振る舞いだけでなく、料理界の上下関係の厳しさ、また、一部ではまだ残っていると言われる女性蔑視、差別的な側面なども含め、たくさんのことを学んで帰ってきてくれました。そして彼女が一流レストランで学んだことを、若い移民役の生徒たちに伝えて教育するということを実践してくれました」
(※マチュー・パコーの父親はパリの三つ星レストラン「ランブロワジー」の料理長として有名)
若い頃から興味を持っているのは社会の不公平さ。時事問題をユーモアでもって映画で伝えたい。
──監督は助監督の体験が多く、若い頃はリュック・ベッソン監督の助監督もしていたと聞きます。ただ、ベッソン監督の得意とするアクション活劇の方ではなく、社会におけるマイノリティの人々に温かい眼な差しを注ぎ続ける映画作りをされていますが、何か特別なきっかけはありますか。
「私が若い頃から特に興味を持っているのは、社会の不公正さということです。見た後に討論を要するような重いテーマや、時事問題をユーモアと人間性をもって映画で伝えたいっていうのが、私の考えです」
撮影が終わったあと、出演した子どもたちから「私たちを信じてくれてありがとう」と謝意を受けた
──監督の映画を見ていつも素敵だなと感じるのは、何らかの理由で社会でマイノリティとされている人たちの個の尊厳を大切に描くことです。今作でも、移民の子どもたちのプライドを大切に表現されていますね。
「撮影が終わった時、出演してくれた若者たちから『私たちを信じてくれて、ありがとう』と言われました。自分たちに移民というレッテルを張らず、普通の一市民として、あるがままに普通に受け入れてくれたと感謝の言葉を受けたのですが、 その瞬間は、私も人として、互いに分かり合えたという、すごく美しいシーンでした。映画を通して、こういった出会いがあったことも素晴らしかったですし、この映画を離れても、人間として素晴らしい出会いができたとことに感謝しています」