映画館に送客するところまでがU-NEXTの使命

──動画配信サービスはどうしても“デジタルの顔つき”をしていて、中の人の思いや熱意が伝わりにくいというのは、確かにあると思います。また熱心な映画ファンからは、「配信映画は映画ではない」「映画は映画館で見てこそ」といった意見も含めて、線引きされるというか敬遠されることもありますよね。でも思い返してみると、少なくとも1990年代以降のビデオレンタル店と映画ファンの間には、対立するという構図はなかった。

そうなんですよね。DVDがぐっと勢いを増したのは『マトリックス』(1999)とPS2がリリースされた2000年。それ以前はVHSの時代でした。オリジナルビデオもたくさんあって、三池崇史監督や黒沢清監督などの名作もたくさんあり、ひとつの文化になっていました。

劇場公開作かオリジナルビデオ映画かといった区別はもちろん、海外のテレビ映画を日本では“未公開洋画”として普通の洋画と並べてリリースしていましたし、それほど境目はないと思っていました。僕自身は劇場で見ることとレンタル店へ行くことは別のことで、共存や競争といった考えもなかったです。それが今は配信になっただけだと思っています。

──実際にU-NEXTは「映画文化を守るためには劇場が元気でなければいけない」という方針で、劇場とのコラボレーションも実践していますよね。

U-NEXTのポイントを使えるようにするなど、全国の劇場との連携は10年ぐらい前からやっています。いつも我々が言っていることですが「映画は映画館があるからこそ映画なんだよ」と。僕らは映画館がなくなったら困りますし、映画館に送客するというところまで考えることが、U-NEXTのユーザーさんにとっても一番いいことだと思っています。

U-NEXTでは映画への出資も行っていますが、劇場公開のタイミングから一緒に盛り上げていきましょうというスタンスです。配信事業者が出資するというと、「すぐに配信をするのでは」とか「公開より先に配信をやるのではないか」と思われがちですが、我々はそんなことを期待しているわけではありません。

実際に劇場でヒットしないと、その後の二次利用でも無風で終わってしまうことも多いですから。収益の最大化を図る中で、パートナー側から「早めに配信してくれないか」と言われることは、もちろんありますけどね。
U-NEXTでは都度課金(TVOD)のレンタルと見放題(SVOD)の両方をやっていますが、そうした背景から、新作は必ずレンタルから始めます。かつ、劇場公開から2ヶ月以内など早いタイミングで配信をする場合は1000円台で配信をします。

お客様にとって、近視眼的に見たらこの価格設定はいいことではないのかもしれませんが、長い目で見たら映画の価値や豊かさを守ることに繋がると信じています。幸い、お客様からのネガティブな反応は少なく、「これだけ早いなら、この価格になるよね」とご理解いただけている印象です。