映像化への唯一の注文は「原作を超えてくれ」
――『静かなるドン』の電子書籍化は1999年と割と早い段階でしたが、当時は抵抗なかったのでしょうか?
それは一切ないですね。自分が排泄したもんですから、それをどう処理してもらってもまったく気にしないというか。完成したものが雑誌に載ってるんだから、漫画の原画展というのはよくわかりません。
――ファンとしては新田先生の原画展を見てみたい気持ちもあります。
(仕事場の棚を指さして)その辺に全部積まれてますよ(笑)。ただ俺の原画はボロボロですからね。横着なもんで、一枚のページを切り分けてアシスタントに渡したりしてた。それをテープで貼って戻したりしてね。テープも黄色くなってるし、ポロポロと写植(漫画に貼られている文字)も落ちて、目も当てられなくなってますよ。
――『静かなるドン』はこれまで何度も実写化されていますが、それについても、自由にやってくれというスタンスなのでしょうか?
そうだね。唯一、注文するとしたら「原作を超えてくれ」ってことだけ。テレビでも映画でも、携わってくれた方が損をしてしまうのが一番イヤだったので、原作を超えるくらい面白いものを作ってくださいというだけですね。
――伊藤健太郎さんが静也役を務める新作映画(全4話)が5月12日から公開されましたが、これまで静也を演じた俳優で、特に思い出に残っている方はいますか?
香川照之さんが対談をしにここ(仕事場)にきたことがあったな。家の前に赤いアルファロメオが停まってて、約束の時間の前から遅刻しちゃいかんと待ってるわけですよ。謙虚さがあったんですけどね(笑)。