裁判傍聴で聞く“定番のセリフ”
北尾 僕の場合はね、ちょこちょこ興奮するんです。ちょっとしたことで。その中のいくつかが形になるんですけど、途中で冷めちゃうこともあるし。
高橋 でも、この取材に関してはなぜ冷めなかったんですか。
北尾 「法学セミナー」という、司法試験を目指す学生さんが読むような本当に硬い雑誌があって、そこにコラムを連載させてもらっていたんです。僕はずっと裁判を傍聴してきたけど、いつも判決のときに裁判長が言う定番の台詞あるじゃない? 「二度とここには来ないように」って。
高橋 執行猶予判決を言い渡したあとに執行猶予について詳しく説明するときとか、特にそんな台詞が出ますね。
北尾 そうそう。ちゃんとしっかり更生して第二の人生を歩んでください、みたいなことを言うわけです。だけど傍聴していると「あなた何度目の裁判ですか」みたいな被告人をいっぱい見かけるわけです。実際は裁判長の励ましにもかかわらず、またやっちゃう人がいる。統計だと再犯者率は5割近いんですよね。それはなぜかというと、刑務所から出たときに、仕事も家もお金もない、友達もいない、そんな状態で放り出される場合がある。そうなると、本当はやり直したい気持ちはあったとしても、ついついまた悪いほうに行っちゃったりすることがある。
高橋 刑務所に入りたいからという理由で無銭飲食して逮捕されたりという事案もありますね。
北尾 捕まるためにやってるような人もいる。でも再犯率を下げなきゃ、ということは、前から言われているんですよね。そのために協力雇用主という制度がある。ざっくり言うと、出所者を積極的に雇い入れる会社に登録してもらって、国の方で補助を出しますよという制度です。登録している会社は数千社あるんですが、実績のある会社は、1000社ぐらいかな。実際は、出所者を雇って大問題を起こされたりとか、いろんなことがあって、ちょっと尻込みしてしまうという場合もあって、なかなか「どんどん来いよ」みたいな会社がない。ところが、廣瀬さんの会社は、もう今は社員40数名いるんですけど、8割以上は出所者です。本人もそうです。
構成/高橋ユキ 撮影/中川カンゴロー
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