自ら建設会社を作って、刑務所出所者を雇用

北尾 ユキさんは傍聴メモも、最初からもう小っちゃい小っちゃい字でものすごいスピードで書いていて。僕は自分がマニア気質じゃないので、マニアの人を取材したりするのが好きだし、全員尊敬するんです。同じことを飽きずにですよ、何十年もやって、生涯もうほかのことに目もくれないような方を。

高橋 傍聴マニアの中には私に限らず詳細なメモを取る方がいらっしゃいますよね。私は最初の頃は本当に毎日裁判所に通ってましたが、トロさんは毎日来る派じゃないイメージがあった。それにお互いが毎日通っていた時期がずれていたんですよね。そのせいか、トロさんが来た日って裁判所がザワついてて「今日はトロさんいるよ!」とか、伝聞で回ってくるんです(笑)。

〈刑務所出所者を雇用する社長〉栃木のレディース暴走族「魔罹唖」の初代総長は、いかに刑務所出所者たちの“聖母(マリア)”となったのか?_3
高橋ユキ氏

北尾 しょっちゅう通っていた時期もあったんだけど、見てる法廷も、見てる事件も違うから、行ってても会わなかったのかもしれない。で、何年かするうちに、ユキさんが原稿を書き始めて、同業者というか、そんな感じにだんだんなってきた。一貫して大きな事件、主に殺人事件を追いまくってたけれど、裁判所でメモを詳細に取って書くイメージだったから、現場に行くようなイメージってあまりなかったんです。だから現場で詳細に取材した『つけびの村』(小学館文庫)が出た時は「もう、こんなになられて」っていう感じがあった。

高橋 ありがとうございます。長い付き合いになりましたよね。今回の新刊『人生上等!未来なら変えられる』で取材されている廣瀬伸恵さんについてですが、2019年あたりにトロさんとお会いした際すでに「栃木の元レディースの総長で、自分で建設会社を作って、協力雇用主になっているすごい人がいる」と、興奮して話していたのが忘れられなくて、トロさんはきっとその方について書かれるんだろうなと心待ちにしていました。