選挙制度を変えたかったのなら民主的にやるべき
前出の全国紙記者が続ける。
「2022年11月に神戸地裁は木村容疑者の訴えを退けました。その後、木村容疑者は大阪高裁に控訴しましたが、彼のものと思われるTwitterの投稿で、2023年3月23日に『本日の口頭弁論では審議不足を指摘した控訴人に対し、審議を拒否し。いきなりの結審でした。大阪高裁の無法振りが露呈しました』(原文ママ)と怒りを露にしていました。来月、大阪高裁による控訴審判決の言い渡しが予定されていましたが、判決を待つことなく、自分の訴えは聞き入れてもらえないと絶望したのかもしれません」
Twitterは4月11日が最後の投稿となった。一部抜粋する。
〈普通の国民が立候補できない現状の制限選挙下では、普通ではない世襲と、政党の言いなりの犬しか立候補出来ません〉
この投稿の4日後に凶行に及んだ木村容疑者は逮捕後、「雑談にも応じず黙秘を続けている」と報じられているが、ある弁護士の名前を口にしている。
元日弁連会長の宇都宮健児弁護士だ。
「事件の起きた15日に和歌山西警察署から『木村さんが弁護を依頼したいと言っている』と電話がかかってきていましたが、土日は事務所には誰もおらず、留守電に気付いたのは月曜日でした。ですがその日のうちに『もう別の弁護士に会ったので弁護の依頼を取り消します』と警察から連絡がありました」(宇都宮弁護士)
仮に平日に電話がかかってきていたとしても、東京都から和歌山県という距離の問題に加え、多忙を極める宇都宮弁護士は木村容疑者の弁護は引き受けられなかったと言う。そして依頼された理由について宇都宮弁護士はこう推察する。
「最初は依頼の動機がまったくわかりませんでしたが、木村容疑者が選挙制度に問題意識があったことが徐々に明らかになってきています。私は2016年に世界一高い日本の選挙供託金は憲法違反だと提訴した、供託金訴訟弁護団長を務めたことがあります。それで私に依頼したのだろうと。世論を動かすためには市民運動や国会議員への働きかけ、また裁判だって運動のひとつになります。選挙制度を変えたかったのなら、それこそ民主的にやらなくてはなりませんし、時の首相を襲撃するなど言語道断です」
一日も早く本人の口から犯行の動機が語られるのが待たれる。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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