後編「NHKのど自慢」に批判続出。21年間、鐘奏者を務めた“鐘のおじさん” 秋山気清さんはカラオケ仕様にリニューアルされた番組を見て何を思う?

“鐘のおじさん”の知られざるエリート経歴

「鐘を鳴らしているこの道具はハンマーって言うんですよ。1本6000円くらいで、7年間くらい使うとダメになってしまいますね。真ん中から少しずつ剝がれて最後は中央に穴が空いて音が全然違ってきちゃうんです。『(NHK)のど自慢』で鐘を鳴らしていた21年間で3本のハンマーを使ってきました。これが最後の放送でも鐘を鳴らしたハンマーです」

〈鐘を鳴らして21年〉“鐘のおじさん”こと秋山気清さんが語る「NHKのど自慢」の魅力「私としては全員合格の鐘を鳴らしたかった」_1
秋山さんが使っていたハンマー
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優しい口調で語る秋山気清さん。日本を代表する長寿番組「NHKのど自慢」で“鐘のおじさん”として親しまれ続けてきたが、3月26日の番組放送中に小田切千アナウンサーが秋山さんの卒業を発表。秋山さんが笑いながら泣き真似をして頭を下げると、会場内は大きな拍手で包まれた。

「あの時はバックバンドの人たちに『最後に泣き真似しろよ。俺達も一緒に泣き真似するから』と言われていたのですが、見事に裏切られ私一人が泣き真似をしてしまいました。

去年の12月に突然スタッフから3月までと告げられた時は『あと1年くらいは続けられたらなあ』と思いもしましたが、今となっては『終わったなあ』『21年間ってずいぶんやったなあ』と思っています」

実は秋山さん、音楽界のエリートといっていい経歴の持ち主だ。67年に東京芸術大学を卒業後、東京交響楽団、藝大フィルハーモニアなどでオーケストラ団員や同大で非常勤講師を務めてきた。そんな秋山さんが音楽の道を志したのはひょんなことがきっかけだった。