女の子向けアニメだからこそ気を付けていたこと
――幼い女の子が観るアニメだからこそ、表現にはより一層気を付けていたのかと思いますが、具体的にはどのような工夫をされていたのでしょうか?
主人公の女の子に残酷なことはさせませんでした。具体的には、顔やお腹を殴るといったことはNG。敵に吹っ飛ばされても、痛々しく描写するのではなく、岩やビルにぶつけられた瞬間に崩れるといった具合に衝撃の強さを表わしていました。そうすることで、キャラクターへのダメージの大きさを表現しつつ、現実じゃあり得ないようなシーンとすることで子どもも真似しないのではないかと思っていて。子どもは見たものを真似してしまうので、細心の配慮を心掛けていたんです。
またプリキュアでは明確に「敵」、「正義」みたいな言葉は使っていません。プリキュアとしては、敵を殲滅するなんてことは考えておらず、あくまで自分たちのテリトリーを侵略しないでほしいというスタンス。だから初代プリキュアのキメセリフは、「とっととおうちに帰りなさい!」なんですよね。
プリキュアの転換期となった2作品とは?
――「ふたりはプリキュア」は、2005年に続編「ふたりはプリキュア Max Heart」として再スタート。そして、2006年には「ふたりはプリキュア Splash☆Star」が放送開始しました。こちら鷲尾さんのお気に入りの作品とお聞きしましたが……?
そうですね、思い入れは強いです(笑)。初代の成功がきっかけで「プリキュア」は子どもたちに受け入れられましたが、制作側としては常に4歳から6歳くらいの新しい視聴者を引き込むため、3年目から登場人物を一新して新しいシリーズを作ることにしたんです。そうして生まれたのが「Splash☆Star」でした。
しかし、残念ながら視聴率は思うように上がらず1年で終了に。本当は続編の計画もあったのですが、シリーズの継続どころではなくなってしまって。私含めスタッフから愛されていた作品だったのでショックでしたね。
さすがにシリーズ打ち切りかと思っていたのですが、「もう1作やりましょう」ということで新しいプリキュアを作ることになったんです。それがシリーズの転換点となった「Yes!プリキュア5」でした。
――プリキュアの人数が一気に5人に増えて、それまでバディものの側面が強かった作風からチーム主体の物語へと変化しました。結果として、その後のシリーズの礎となる作品になったと感じます。
チーム主体の作風となって、一番注意したことはシリーズの原点となった「自分の足で凛々しく立つ」ことを忘れないこと。「プリキュア5」はチームとして戦うけど、決して仲間頼りにはなっていません。夢原のぞみ(キュアドリーム)にせよ、ほかのメンバーにせよ、自分がピンチでもほかのメンバーを巻き込もうとはしないんですよ。
かといって、仲間たちも見捨てるわけではなく、そんなメンバーの想いをくみ取って、颯爽と助太刀にやってくる。阿吽の呼吸じゃないですが、そうしたチームの構成員一人ひとりが個々として自立していて、そのメンバーのために一生懸命になれるようなチームって最高じゃないですか(笑)。
起死回生で「プリキュア5」がヒットとなり、続編である「Yes!プリキュア5GoGo!」も放送されました。その後のシリーズ存続にもつがなり、今日に至っているんでしょうね。