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2004年の「ふたりはプリキュア」から放送開始した人気TVアニメ「プリキュア」(テレビ朝日系)シリーズが20周年を迎える。そのアニバーサリーを記念して、2月からは「全プリキュア展」が開催されており、歴代主人公プリキュアの等身大キャラクターや当時の資料などが展示され、大変な盛況ぶりを見せた。

『プリキュア』は打ち切りの可能性もあった!? 初代プロデューサー鷲尾天が語る、20年間続いた礎となったのは最初の企画書に書かれていた「自分の足で凛々しく立つ」こと_1
プリキュアシリーズ20周年を記念した、歴代主人公たちが一堂に会したスペシャルビジュアル
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自分の足で凛々しく立っていれば男も女も関係なし!

――これまで多くの作品を世に送り出してきた「プリキュア」シリーズですが、企画の立ち上げ段階では「女の子だって暴れたい」というコンセプトがあったとお聞きしています。ある意味、“女の子らしさ”というものに反発したコンセプトに思えますが、当時どのように考えていたのでしょうか?

当時、私は女の子向けのアニメのノウハウがないまま担当することになりまして、監督である西尾大介さんとともにシリーズの方向性を模索していました。「女の子が主役」という作品のイメージは私も西尾さんも全くつかめていなかったので、「それならいっそ自分たちの考える主人公でやってみようか」と開き直ってみたんです。

そこで考えていくうちに、誰かを頼らず、自分の力で立ち向かっていけるというキャラクター像が浮かび上がってきまして。作品をとおして描くことができれば、とてもかっこいいんじゃないかと思ったんですよ。私はこのコンセプトを「自分の足で凛々しく立つ」ことと呼んでいます。

『プリキュア』は打ち切りの可能性もあった!? 初代プロデューサー鷲尾天が語る、20年間続いた礎となったのは最初の企画書に書かれていた「自分の足で凛々しく立つ」こと_2
プリキュアの生みの親・鷲尾天氏

――自分の力で立ち向かっていくというと、シリーズ1作目「ふたりはプリキュア」に登場する美墨なぎさ(キュアブラック)と雪城ほのか(キュアホワイト)は、性格から所属するコミュニティーまで何もかも正反対なふたり。鷲尾さんが思いついたコンセプトを描くには、かなり難しい関係性だったと思うのですが、なぜこの設定にされたのでしょうか?

幼馴染だとか、運命で導かれたふたりだとか、特殊な設定にしたくなかったんですよ。むしろ、同じクラスで顔は知っているけど仲はそこまでよくないふたりをバディとして組ませたらどうなるんだろうという気持ちのほうが強かった。友人や家族を頼らず、ふたりのみの関係を築き、かけがえのない相棒へと至り、自分たちの力で敵に立ち向かっていく姿を丁寧に描きたかったんです。西尾監督とはずっとそんな話をしていました。

しかし、なぎさとほのかならではの関係性が理由で製作するのが難しかったポイントもありました。中学生って精神面でどうしても未熟で衝突も描きやすいのですが、そもそも彼女たちはあまり接点のないふたり。現実に照らし合わせると正面切ってぶつかり合うことなんてないので、仲よくなっていく様子を描くのは本当にしんどかったです(笑)。

それでも作中では、ふたりの仲のぎこちなさを発端としてギクシャクした過程を詳細に描きました。結果、きちんと仲直りして、他人に近い関係から親友にまでのぼり詰めることができましたし、また「ふたりはプリキュア」という作品を作る上では必要な流れだったんだなと思っています。西尾監督はこの二人の感情の機微を本当に丁寧に描かれていました。