大人の食物アレルギーも治る
ここで気になるのが、食物アレルギーは治るのかということ。一度発症したら原因食物を一生食べられなくなってしまうのだろうか。
「子どもの時に発症した食物アレルギーは大人になるにつれ、よくなることが多いです。一方、大人の食物アレルギーはこれまで基本的には治らないとされていました。しかし、最近では改善されたという報告も増えてきてはいます。
特に、皮膚や粘膜からの侵入が原因で食物アレルギーを発症した場合、原因となった食物を含む製品の使用を中断すれば、数年かけて食物アレルギーがよくなることがあります。例えば化粧品の使用で成分内の小麦アレルギーが発症した場合、原因になった化粧品の使用をやめることで治るというようなケースです。
逆に一部の専門病院で子どもに対して行われている、原因となる食物を症状が起こらない程度に少しずつ食べる『経口免疫療法』は、大人には効くかどうかわかっていません」
子どもの好き嫌い。食物アレルギーが潜んでいるかも?
最後に、気をつけたい見落としがちなアレルギー反応も教えてもらった。
「子どもの頃から味が嫌いであまり食べたことがない食物が、大人になって検査をすると実はアレルギーだったというパターンは多いです。アレルギー反応と味の嫌悪感との関係はわかっていませんが、アレルギーによる喉の不快感などを『嫌い』と感じていた可能性もあります」
幼少期からの不快感が実はアレルギーだった例として、特に多いのが果物類だという。
「『果物は食べると喉がかゆくなるもの』だと思い込んでしまっており、アレルギーだと認識していなかったケースもあります。以上のことから、子どもが嫌いな食べ物を無理矢理食べさせることには、アレルギーの観点からは一定のリスクがあるのです」
さらに、皮膚や粘膜からの侵入が原因のアレルギー反応でも、見落としがちなものが。
「皮膚の症状と食べて発症する症状は一致するとは限りませんが、エビやカニなどの甲殻類を調理で触ると手がかゆいと感じる方が、実はそれらのアレルギーだったということも。また、食物ではありませんが、毎年春に喉風邪をひいて咳が続く方が、花粉アレルギーだったというパターンはよくあります。花粉は目や鼻だけでなく、喉に症状が現れることもあるのです」
いつ発症するかわからない食物アレルギー。対策を正しく知っておくことは大切だ。
取材・文/菱山恵巳子