花粉症との関連も指摘!
貴重な専門医からの警鐘
大人の10人に1人は「特定の食べ物を食べたときにアレルギー症状が出る」と回答した調査がある。花粉症と並び、患者数が想像以上に増えているのが成人食物アレルギーだ。
2010年に起きた“旧茶のしずく石鹼事件”を覚えているだろうか。この石鹼を使ったために約2000人に、食物アレルギーが集団発生した大事件である。石鹼なのになぜ食物アレルギーなのかと疑問に思うかもしれない。実はこの石鹼に含まれていた加水分解小麦という小麦由来の成分が、小麦アレルギーを発症させる危険性のあるものだったのだ。もともと食物アレルギーがまったくなかった人でも、この石鹼を使っただけで、小麦の入った製品が食べられなくなり、顔に蕁麻疹が出たり腫れ上がったり、呼吸困難で救急搬送されるなどの被害が全国各地で多発。裁判にもなっている。
「小麦を食べなければいいんでしょ」と思うかもしれない。しかし、私たちが口にする飲食品の多くには小麦成分が含まれていて、パン、うどん、パスタはもちろん、醬油、カレー、ハンバーグなど数えきれない。それらを口にすることでアレルギー症状が現れるため、日常生活の制限は非常に大きい。本書に書かれた、これまでアレルギーの体質がまったくなくても、成人食物アレルギーは誰にでも起こり得て、しかも予想が難しく、大人になって初めて発症するという事実は衝撃だ。しかも小麦だけではない。人によって果物、大豆、甲殻類、魚類、そば、スパイス、ピーナッツ、ゴマ、牛乳、肉類、食品添加物など多種多様な食物がアレルゲンとなる。さらに、花粉やダニなどの環境アレルゲンにアレルギーがある人が、食物のアレルゲンに対してアレルギー反応を起こすという“交差反応”があるというのだ。
問題は、いつどこで誰に起こるかもしれない大人の食物アレルギーの専門医が全国で20人ほどしかいないということ。また、食物アレルギーの情報は科学的証拠に乏しい、いい加減なものも少なくない。著者は、その貴重な大人のアレルギー専門医として16年診療し続けている。その豊富な知見から得た情報は、これまでの食物アレルギーのイメージを大きく変えるものだ。
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