「アヘン王国に潜入」「コンゴで本気で怪獣探し」早稲田探検部レジェンドOB・高野秀行が語る“誰もやらない生き方”「40代まで売れなくて…」_5
早稲田大学探検部の部員たち。左から富田大樹さん、田口慧さん(2023年卒)、久保田渚さん 撮影/岡庭璃子

「誰もやらないことで生きていくって難しいことですか?」

――さて、現役の探検部員から高野さんに聞きたいことを預かっています。まずは「面白いものをつくるための、基本的なスタンスはありますか? 周りから面白がってもらえるように考えるのか、自分の興味ありきで考えるのかどちらでしょうか?」という質問です。

興味ありきですが、周りの人たちのことも無視できないですね。探検部時代なら他の部員たちが面白そうと思わなければダメですし、今は読者が面白いと思ってくれるものでないといけない。

でも、それはやってみないとわからないことが多いんですよ。例えば今、沖縄の島にいるわけですよ(※インタビューは今年2月に実施)。

沖縄の怪奇現象とか怪異を本にできないかなと思って来てみたんですけど、こっちに来てみてから「そういう本ってすでにたくさん出てるな」「俺がやろうとしてることと何の違いがあるんだ?」って気づいてしまった。ちょっとこの企画はダメかなって、思ってる(笑)。

――高野さん視点で書けば、それだけで面白くなりそうな気もします。

編集者も読者もよくそういうことを言ってくれるのですが、違うんですよ。僕は自分が何を書けば、一番オリジナリティとか面白さが発揮できるか考えて、すごく慎重に選んでいます。

――高野さんのモットー「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」に関して、「誰もやらないことで生きていくって難しいことですか?」という質問も学生からありました。

先行者がいない生き方は難しいですよ。25歳で大学を卒業してから40歳過ぎまで、本当に売れなかった。

すると、自分が間違っているかもしれないという思いが常につきまとうわけだけど、誰にも「これでいいのか」とは聞けないんですよ。

本の内容も既存のジャンルに当てはまらないので、書店のどのコーナーに置かれているか、まったくわからない。怪獣探しの本(『幻獣ムベンベを追え』)を出したときは、「生物」の棚に置かれていて、「そこは違うだろ!」って思ったり(笑)。

あと博士号を持っていたり、元新聞記者だったりといったわかりやすい背景を持っていないから、評価されにくいという側面もありますね。

たとえ僕の本を面白いと思っても、僕が何者かわからないと「うっかり『面白い』って言っちゃって大丈夫か?」と読者は心配になるわけですよ。

だから今でも「隠れ高野本ファン」っていう人が多い(笑)。