日本人と在日中国人がともに取り組むことでビジネスが広がる

具体的にはどんなやり方があるのか。
中国語のできない日本人が中国人コミュニティに直接入っていくことが難しければ、たとえば抖音(中国でのTikTokの名称)や小紅書(RED BOOK。中国版Instagram)、YouTubeで活躍する在日中国人インフルエンサーなどにコンタクトを取り、ハブになってもらうといった方法がある。

「日本と中国のことが両方わかり、中国語、日本語、英語のトリリンガルである日本在住の中国人KOL(キー・オピニオン・リーダー)を活用すれば、在日+訪日中国人だけでなく、中国本土の14億の人たち、あるいは全世界に6000万人いると言われる在外中国人相手のビジネスにつながる可能性もあります。日本のメーカーやEC事業者にとって大きなチャレンジになりえるんです」(趙氏)

85万人の巨大市場を持つ在日中国人が、中国本土14億人への対中ビジネスのカギを握る_2
趙氏の会社と契約しているKOLたち

趙氏はほかに日本人の参入余地が大きい在日中国人向けの事業として、教育ビジネスを挙げる。たしかに近年、中国資本系のインターナショナルスクールが日本でも次々に作られているが……
「中国人の親はとても教育熱心。子どもの教育に失敗したら親失格だという風潮があるほどです。若い在日中国人には富裕で高学歴な人が多いですから、なおさら関心が高い。インターナショナルスクール以外にも様々な習い事の塾などもいいと思います」(趙氏)
中国では子ども向けに限らず各種オンラインスクールが非常にさかんになっているというが、日本ならではの文化に関する分野で、中国語で開講するオンラインスクールもアリかもしれない、ということだ。

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趙氏の会社NUESEでもインフルエンサー育成などオンラインスクール事業を手がけている(提供:趙氏)

14億人の中国市場は言うまでもなく巨大だが、在日中国人85万人も決して少なくはない。しかも在日中国人は、日本で流行する中華系コンテンツやサービスに従事していたり、あるいは食品やコスメのトレンドに火を付ける影響力を持っていたりする。そのため、日本にいる中国人と接点を持つことがむしろ、海の向こうへもつながる近道にもなりえる。
コロナ禍が明けるまではインバウンド需要は回復が難しいだろうが、すでに日本に在留している人たちは突然減ったりはしない。改めてその身近な存在に目を向けてみてもらいたい。

取材・文 飯田一史