抗生物質は良薬か悪者か

私は、抗生物質は「悪い物質」だと言ってきましたが、すべてがそうではありません。抗生物質は肺炎、敗血症、結核、性感染症などの病気の治療に不可欠。幼児の死亡
率を大きく低下させ、人の寿命を延ばした良薬です。

下図は1903年~1978年までの死因別の死亡率(人口10万人あたりの死亡人数)の変遷を示しています。

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日本の抗生物質使用開始前後の各疾病の死亡率の変化
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抗生物質が一般的に使用され始めたのは、1950年代です。これより以前には、 肺炎・気管支炎、胃腸炎、結核、腎炎・ネフローゼで死亡する人が多かったのですが、

これらは細菌感染症です。胃腸炎は腸チフス、コレラなどで、胃が荒れたことではありません。1950年以前は、細菌感染症が子どもの命を奪っていたのです。

この経緯を知ると、抗生物質は間違いなく「良薬」です。

ところが近年、抗生物質に対する耐性を持った日和見感染菌を生んでいます。日和見感染菌は健康な人には病気を起こさず、病気で免疫力が低下した人に感染する細菌です。

病院内ではこの日和見感染菌が抗生物質の効かない耐性菌となっています。薬剤耐性の日和見感染菌は多くの人の命を奪っており、人類の脅威になっています。厚生労働省は薬剤耐性菌の出現を減らすため、抗生物質の使用を減らす努力をしています(薬剤耐性〈AMR〉対策アクションプラン)。

この問題とは別に、私が説明してきたように、抗生物質の使用はアレルギーと自己免疫疾患を増加させています。

抗生物質の歴史にはこのような〝光〟と〝影〟があるのです。

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小柳津 広志
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2020年1月31日
1430円
200ページ
ISBN:978-4426126193
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