高市大臣は放送法の解釈変更には慎重だった?

――高市大臣はなぜ、「文書はねつ造だ」などという主張をしたと考えますか?

それは高市さんにしかわからないけど、想像はできます。高市さんが登場するのは全78ページある文書中わずか4ページほど。しかもよく読むと、大臣レクで高市さんは「本当にやるの?」、「放送局と全面戦争になる」など反応しており、どちらかというと放送法の解釈変更に慎重な発言をしているんです。

だから、「そこに書かれていることは私の記憶と違っており、不正確」と否定するだけでよかったのに、むきになって「文書はねつ造だ」と言ってしまった。おそらく、高市さんは自分が登場する4ページの内容だけでなく、小西文書のストーリー全体を否定したかったのではないでしょうか?

小西文書には高市大臣が知らないところで礒崎洋輔首相補佐官(当時)が「オレと総理が二人で決める話。首が飛ぶぞ」などと、パワハラまがいの恫喝で総務省に介入し、放送法の解釈変更を迫るやりとりが生々しく記されています。

これが事実なら、高市大臣は放送法の解釈変更にまつわる一連の重大な発言を自らの政治判断でなく、礒崎補佐官の振り付けに従ってしていたことになります。

「高市氏は“官邸のパペット”だとバレるのを恐れたのでは」元経産官僚・古賀茂明氏が語る「ねつ造発言」と「行政文書の虚と真」_2
総理官邸

――つまり、高市大臣は官邸のパペットにすぎなかったとバレてしまうと。

そうです。しかし、それはプライドが高い高市さんにすれば、絶対に受け入れることのできないストーリーなんです。高市さんの強みは右派岩盤票に支持されていること。だからこそ、高市さんは安倍さんばりに強い『右派の星・サナエ』を演じ続ける必要がある。

しかし他人の振り付けに従っていたことがわかってしまえば、リーダーシップに欠ける政治家は応援できないと、頼みの右派岩盤層にもそっぽを向かれかねません。その危機感が自分の登場する4ページの否定だけでなく、文書全体のストーリーを否定させてしまったのではないでしょうか。