社外活動の効用
しかし、外の世界を見せないことは、本当に自分が働く会社への愛着や忠誠心、エンゲージメントを維持し、高めるのであろうか。
実際には真逆である可能性がある。20歳代の若手社会人2000人以上に対して行った調査結果からは、興味深い事実が浮かび上がってきた。(リクルートワークス研究所、2020、若手社会人のキャリア形成に関する実証調査)
まず、社外の活動が自社への評価にどう作用するのかを調べてみよう。様々な「社外での活動経験の有無」と「会社に対する評価」の関係を整理するべく比較した(図1)。
例えば『収入を伴う副業・兼業』を経験した若手(5・8ポイント)は、経験していない若手(5・4ポイント)より自社(現職企業)への評価が高い。
無報酬の副業・兼業(プロボノ活動)、学び直し、ボランティア活動、社外勉強会の主催・参加といった社外活動の経験の有無で比べるとすべての活動で、「社外活動を経験している人の方が、会社への評価が高い」という傾向が出ている。
さらに、社外活動の頻度と自社への評価点の関係性を見てみよう(図2)。
現職企業の評価点が高い若手は、社外活動スコアが高いことがわかるだろう。例えば、自社に対して10点満点をつけている若手は、社外活動スコアが+1.62ポイントと高頻度、6~9点をつける若手についても+0.30~1.04ポイントと社外活動の頻度が上昇していく。
一方で、0~3点を自社につけた若手は、社外活動スコアが-0.70 ~ -0.46ポイントとなっており、低い。「社外活動をしている人は、自分の会社が好き」という傾向が見られるのである。
(なお、上の図では「社外活動と企業評価の関係」をより明確にするため、"過去の社外活動スコア"と"現在の企業評価点"を比較し、転職をしていない若手に限定して集計している(N =1407)が︑現在の社外活動スコアと現在の企業評価点を比較しても全く同様の傾向となる)
さて、この結果の意味することはとてもシンプルだ。
「他社と比べて初めて、自社の良いところがわかる」。比べることで初めて長所を知り、短所を許せるようになることは、ショッピングでも恋愛でも同じ。人間の"当たり前"である。
また、「自分がやりたいと思った社外活動を認めてくれた」こと、会社が自分の挑戦を後押ししてくれた信頼感から、「会社に対して本気で貢献したいと思った」と私に語ってくれた若手社会人もいた。
「会社が自分のことを応援してくれている」と感じたことで、個人と会社のギブアンドテイクの循環が回り出す。これこそ、新しい個人と会社の関係の芽吹きではないか。