若者の「不安」の正体
2015年の若者雇用促進法や、2019年の働き方改革関連法により、2010年代後半以降に入社した新入社員の職場環境は、特に現在管理職にあたる40~50歳代が入社した環境とは全く異なるものになっている。
言うまでもなく、労働時間の削減や厳しい職務内容の低減など、明らかに働きやすくなっているのだ。当然離職率は下がるものだと考えられるが、驚くべきことに離職率は年々上がり続けている。
なぜ職場環境が良くなっているのに若者たちの離職率は下がらないのか、彼らが何に不安を感じているのか、大手企業の新入社員を取り巻く職場環境が変化している可能性について、調査結果から整理した。
結果として明らかになったのは若者たちの認識上、現在の職場環境については「比較的負荷が低く、職場環境もサポーティブで、想像を悪い方向へ裏切られることも少なく、会社のことは以前の新入社員より好き」であるという相対的傾向が見られる。
こうした結果は、なぜ新入社員の36.4%が「ゆるい」と感じているのかという疑問に対して、その理由を饒舌(じょうぜつ)に述べその実像を明らかにしている。
加えて判明したのは、大手企業の新入社員の多くが同時に「ストレス実感は決して低くなく、自分は別の会社や部署では通用しなくなるのでは、などの"不安"を抱えている」ことだった。
「ゆるい」のに「不安」、という状況が矛盾しているように感じられるだろう。しかし、職場を「ゆるい」と感じている大手企業の新入社員の方が自身のキャリアの不安を感じているという明確な関係も発見されているのだ。
職場の「ゆるさ」が生んでいる不安の代表例としてひとつの集計を掲示したい(図1)。
「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」という項目に「強くそう思う」「そう思う」と回答した者の合計は、職場を「ゆるいと感じる」と回答した新入社員が非常に高い結果となり、合わせて62.6%に達している。
特に、「強くそう思う」については23.7%であり、圧倒的に高い割合である。このように、職場のゆるさは新入社員のキャリア不安に直結している。
ただしゆるいと感じている新入社員はその会社のことが嫌いというわけではない(図2。「ゆるい」と感じている職場は、上司・先輩の支援が手厚く、労働時間が短く負荷が低い傾向が見られるため、当然と言うべきかもしれない。
10点満点での自社の評価点を出してもらい、職場に対するゆるさ感別に平均点を示すと、最も評価点が高いのが「ゆるいと感じる」新入社員である。
著しく労働環境・条件が悪い回答者が一定数含まれると考えられる「ゆるいと感じない」が一番低いことも頷けるが、いずれにせよ成長できるかどうかと会社が好きか嫌いかは全く別であることが、若者の現状への理解を非常に難しいものとしている。