お刺身とも焼き魚とも違う
“しっとりした新たな寿司の美味しさ”を開拓

気になる寿司ネタの内訳はどうなっているのか。

前代未聞の「加熱寿司」、レンチン3分20秒、9貫で6900円也のお寿司ははたして値段に見合う美味しさなのか?_3
真空パック詰めされた色とりどりの加熱寿司たちには高級感が漂う

「全部で9貫あり、いずれもネタにはかなりのこだわりが込められていました。食感に桜海老粉を乗せることで風味を強化した『海老』、鹿児島県産の脂の乗った4kg台の『カンパチ』、長崎県壱岐産のブランド魚“紅瞳”を使用し、その上にウニまで乗せた『ノドグロ』。

ほかにも、長時間煮込んだことでふっくらとした舌触りの『穴子』、福岡県産・熊本県産のものを使い大葉と梅肉がトッピングされた『真鯛』。何層も重ねて食感を追求した『玉子焼き』、福岡県産・山口県産にこだわった『イカ』、炙ったことで旨味を引き出した『ホタテ』、そして5kg以上の脂の乗ったものを厳選した『サーモン』となっています」

ここからは、重盛さんが特に心を動かされたという3貫をご紹介いただこう。

「1つめは『イカ』です。これは食感の新しさに驚かされました。イカは生だとねっとりとした歯ごたえで、火をしっかりと通すと強い弾力が出るものですが、この『加熱寿司』の『イカ』はそのどちらとも違う中間のような不思議な歯ごたえなのです。生のイカが持つねっとりとした食感を残しつつ、しっかり火を通したイカの持つさっくりとした歯ごたえも感じさせるバランス感覚は見事ですね。また、まるでカールした髪のようになる隠し包丁も軽やかな食感に一役買っていました」

前代未聞の「加熱寿司」、レンチン3分20秒、9貫で6900円也のお寿司ははたして値段に見合う美味しさなのか?_4
新感覚の食感が魅力だという「イカ」

「2つめは『穴子』です。長時間煮込んだことで身はふっくらと柔らか、脂の乗りも程よくしつこくない味わいです。下手な穴子の寿司はタレが濃すぎて、ほぼタレの味しかしないようなものもありますが、この穴子はタレの甘さが控えめで、あくまで穴子本来の濃厚かつ上品な味わいを届けようとしている一品でした。穴子は火を通した状態で出てくることが多い寿司ネタなので、逆にどんな仕上がりなのかが気になっていたのですが、奇をてらわずに王道路線で勝負するという気概が好印象でした」

前代未聞の「加熱寿司」、レンチン3分20秒、9貫で6900円也のお寿司ははたして値段に見合う美味しさなのか?_5
上品かつ繊細な味が絶品の「穴子」

「3つめは『真鯛』ですね。これは『加熱寿司』のよさが一番強く感じられたネタでした。真鯛は生で食べるとかなり淡白な味ですが、火を通すことで上品な甘みが出る魚です。とはいえ、火を通しすぎてしまうと生の真鯛が持つしっとりとした口当たりは消えてしまう。『加熱寿司』はその両方のよさをうまく引き出していました。また、上に乗った大葉と梅肉も真鯛の風味を引き立たせるバランスで非常に美味しかったです」

前代未聞の「加熱寿司」、レンチン3分20秒、9貫で6900円也のお寿司ははたして値段に見合う美味しさなのか?_6
生のしっとり感と火を通したときの甘みが両立した「真鯛」

そしてシャリも特筆すべきクオリティだったという。

「全品を通してシャリの仕上がりにも驚かされましたね。冷凍ご飯は解凍するとベチャッとした食感になりがちですが、まるで炊きたてのお米を食べているかのように、米粒の立ったふっくらとした食感で口ほどきもよく、握り具合も見事な力加減でした」

とにかく想定していた以上の満足度で、感動するレベルだったようだ。

「非常に完成された上品かつ繊細な味なので、個人的には醤油をつけないほうが素材の味をしっかり楽しめると感じましたね」