#1 外国人ヤンキーを「現代の奴隷制」のなかで輸入しないと成り立たない理由

1時間7000円〜1万円で行われる売春

知られざるボドイ・コミュニティーを粘り強く取材し、23年2月に『北関東『移民』アンダーグラウンド ベトナム人不法滞在者たちの青春と犯罪』(文藝春秋)を発表したルポライターの安田峰俊氏に、話を聞いた。本書はベトナム人技能実習生たちが逃亡後にどう道を踏み外していくかを緻密に取材している。

安田氏が取材したなかでも際立った存在感を放つのが、40分7500円の違法風俗店で働く女性ボドイ「日暮里のユキ(25歳)」だ。口元から黄ばんだ乱杭歯をのぞかせる彼女は、愛嬌のあるタレ目こそかわいらしいものの、髪や肌の手入れをする余裕はなく、厚塗りの化粧がかえってアンダーグラウンドの住人であることを物語っていた。一見して、日本の生活に疲れ果てている様子だった。

40分7500円のチャイエス嬢に転身したベトナム人女性技能実習生。「介護職場での差別的待遇」「日本人からのいじめ」「性欲処理」…ボドイ「日暮里のユキ」が見たクール・ジャパンとは程遠い日本の絶望風景_1
日本の性風俗店紹介サイトの中には、ベトナム語のページを表示するものもある。この写真に写っている左手はユキのもの。(撮影/安田峰俊)
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「もともと介護職の技能実習生として来日した彼女は、職場の日本人スタッフから非常に差別的な待遇を受けていたようです。高齢者の排泄物の処理や、忍耐力が必要な食事の介助など精神的負担の大きい業務をすべて押し付けられていたのです」(安田氏、以下同)

給料こそ月13万円と技能実習生としてはまずまずだったが、過酷な職場環境に耐えかね、フェイスブックのボドイ・コミュニティで知り合ったブローカーの手配で脱走。茨城県の農家で働くことになった。さらに半年後、別のブローカーの紹介により、日暮里で身体を売ることにした。

「彼女の職場の違法風俗店は、90年代中盤〜2010年代中盤まで、都市部で一世を風靡したチャイニーズエステ、いわゆるチャイエスが原型です。表向きはマッサージ店ですが、実態としては1時間7000円〜1万円程度で売春を行なっているのです」