ドミノ倒しのにように崩れていくインボイスの導入根拠
この歴史的答弁を受けて、多ヶ谷議員はインボイスの導入根拠を政府に問い質す。政府がその導入根拠に挙げていた「税の公平性」の大前提である益税(=免税事業者は消費税をピンハネして不当な利益を得ている)を自ら否定した直後のため、金子財務大臣政務官は完全に答弁不能に陥る。
【れいわ 多ヶ谷】そもそもインボイスはなぜ導入されるんですか?
【自民 金子 財務大臣政務官】消費税が10%に上がるにあたりまして(中略)10%と8%の税率が2つ存在する中で(中略)税率に見合った税額分をご負担頂くために導入させて頂くことになりました。
【れいわ 多ヶ谷】本当ですか? それ? 今、「益税も無い」と。「預り税ではない」という話でした。(中略)「税の公平性」と言うんだったら、そもそも益税は無いのだから論理破綻してませんか?
【自民 金子 財務大臣政務官】消費税は(中略)事業者の方々が価格転嫁できることは重要であると考えております。
*筆者注:質問と無関係な「消費税の価格転嫁の考え方」を長々と答弁
【れいわ 多ヶ谷】いや、何言ってるかちょっと分からない。質問に答えてないです。もう1回。役人の方もちゃんとしないと、政務官が恥をかきますよ。
【自民 金子 財務大臣政務官】繰り返しになりますけど(中略)消費税は消費税分が売上時に対価に含まれて納税されるまでは事業者のもとに留まることから預かり金的性格を有すると財務省からは説明させて頂いています。
*筆者注:質問と無関係な「預かり金の従来説明」を長々と答弁
【れいわ 多ヶ谷】根本的に会話が噛み合ってないですけど・・。
出典:2023年2月10日 衆議院 内閣委員会
3回連続でトンチンカンな答弁が続いたことで、多ヶ谷議員は諦めて次の論点に話を移したが、政府がインボイスの導入根拠に挙げてきた「税の公平性」は完全に論理破綻していることが国会で明白になったとも言える。
実は、昨年2月〜3月の国会質疑では別の観点(政府がインボイス導入根拠に挙げる「8%と10%の商品をまとめて10%で控除した事例」は本当に存在するのか)で「インボイスの導入根拠は無く、本当の目的は将来的な20%超の消費増税である」ことが岸田文雄総理および鈴木俊一財務大臣の答弁で垣間見えていたが、今回は益税という観点でもインボイスの導入根拠が無いことが明らかになった。
*昨年2月〜3月の国会質疑の詳細は筆者が寄稿した集英社オンライン「インボイス導入の本当の狙いは「消費税20%超増税」への布石か?」(2022年6月23日)参照
しかし、残念ながら新聞・テレビはこうした重要な国会質疑の存在自体をことごとくスルー。多くの国民が実態を知らぬまま、実質的な増税ともいえるインボイス制度が今年10月に導入され、将来的な20%超の消費増税への布石になろうとしているのだ。
*消費税やインボイスについて新聞・テレビが不正確な報道を続ける背景は筆者がtheletterで公開した以下2本の記事参照
「【独自】インボイスの問題を大手メディアが報道できない本当の理由」(2023年1月21日)
「【独自】公開質問で浮き彫りになった、メディア各社のインボイスの本当の理解度」(2023年2月7日)
文/犬飼淳