誰だって「おまえのせいで問題になった」と言われるのはイヤですから、バラエティ番組のプロデューサーたちも、よほど勇気のある人たちを除いて「問題になりそうなことは念のためやめておこう」となるわけです。

私はいつも思うんですけど、BPOってそもそもは政府などの介入を受けないように、業界が「表現の自由を守るため」につくった自主規制のための機構なんですよね。だったら「ここまではOKだよ」という「やれる範囲」を具体的に出すべきだと思うんです。そして、あくまでも「個別具体的な番組の問題」について見解を出さないと、です。

制作現場が「ヤバいこと」をして問題にならないように、「こういうことに気をつけよう」とか「ここまでなら許容範囲」といったことを教えてくれないと、表現の自由は守れませんし、「面白くて、でも視聴者に悪影響を与えない番組」はつくれないと思うんです。今回みたいに、具体的に問題になった番組があるわけでもないのに、「痛みを伴う笑いは悪影響を与える」とか、ざっくり大きく「包括的にNG」みたいな感じで見解を出すのって、政府による介入とたいして変わらなくないですか?

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実際にこの見解が影響して、「あの有名な大晦日のお笑い番組」も終了したとささやかれています。そして、「からだを張った芸をウリにして笑いをとってきた」ベテラン&中堅芸人さんたちは、あまり番組に呼ばれなくなってしまってます。けっこうこれが深刻で、食っていけなくなったり、引退を考えざるをえなくなっている芸人さんも多いと聞きます。

コロナ禍、そしてテレビ出演者の若返り、そこに持ってきて「痛みを伴う笑いはNG」ということになってしまって、「オレたちはこれからどうやって生きていけばいいんだ?」といった感じに追い込まれてしまっているベテラン&中堅芸人さんたちのことを考えると、とても胸が痛みます。